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地味でもいい
第五章

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第五章

「そんなことは」
「そんなことっていうけれど普通だよ」
 しかし涼平は微笑んでこう述べたのだった。
「女の子にプレゼントするのはね」
「普通なの?」
「だからさ。どう?」
 あらためて冬美に問うてみせた。
「それで。どうかな」
「いいわ」
 冬美らしく小さな声で拒んだのだった。
「それは」
「何だ、いいの」
「いいわ」
 また拒む言葉を出すのだった。
「買うのだったら私が自分のお金で買うから」
「わかったよ。じゃあ何を買うの?」
 それならそれで、であった。涼平は今度はこう彼女に言ってきた。
「それで」
「ええと」
「お金は出さないけれどアドバイスしてもいいかな」
 また冬美に言ってきたのだった。
「アドバイスはいいよね」
「アドバイスなの」
「そうだよ。そうだね」
 冬美のその顔を見て。それからだった。
「眼鏡・・・・・・いや」
「いや?」
「コンタクトなんてどうかな」
 それを勧めるのだった。
「コンタクトね。どうかな」
「コンタクトなの」
「そうだよ。それしてみたら?」
「けれどあれって」
「ああ、最近のは安いし」
 微笑んで告げた。
「安心していいよ」
「そうなの。安いの」
「じゃあ行こうか」
 またここで彼女を引っ張る形になった。
「そこにね」
「ええと」
「眼鏡屋はこっちだよ」
 冬美が断ろうとする前に動いてみせた涼平だった。
 そうしてそのうえで。眼鏡屋でそのコンタクトを買ったのだった。そのうえで眼鏡を外して目の中に入れてみるとだった。
「どうかな」
「何か不思議な気持ち」
 眼鏡屋でのその鏡を見ての言葉であった。
「いつも眼鏡かけてたから」
「そうなんだ。いつもだったんだ」
「それで眼鏡がないと」
 違うというのだ。
「何か。全然違うわ」
「ああ、こう言ったら月並みだけれど」
「どうしたの?」
「奇麗だね」
 実はこれは計算してだった。彼はこのタイミングを狙っていたのだ。
「目が」
「奇麗って」
「大きくてきらきらしていてね」
 その言葉は嘘ではなかった。冬美の顔は確かに整っている。しかし雰囲気があまりにも地味なので皆それに気付かなかったのである。
「奇麗だよ」
「そんな」
「あの三人にも言ったけれど俺は嘘はつかないよ」
 ここで冬美にもこの言葉を告げるのだった。

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