第1話「パーティにピザは欠かせない」
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『必ずお前を止めてみせる!』
そして鬼兵隊の船から飛び降りた。
彼が乗っている船はどんどん小さくなってゆく。
過酷だと知っていた。例え破滅の道だったとしても同じ道を歩むと決めていた。
けれど現実はこうして彼の船から落ちている。
このまま落ちてゆく。ずっと――
『おいおい。治療代払わねーままとんずらすんじゃねェ』
そんな文句を言う声によって落下は止まった。
それは先ほど桂と共に脱出した兄だった。
彼は桂に支えられながら、妹の腕を離さずしっかりと掴んでいた。
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『テメェ、借り返すっつったよな。治療代働いて返せ。万事屋でな』
鬼兵隊と手を組んだ春雨と対する桂一派たちの弾丸が飛び交う中で、坂田兄妹は二度目の再会を果たした。
道を外れる時に兄とは絶縁し、もう『家族』として会わないと思っていた。
だが兄――銀時は何もなかったように双葉を万事屋に迎え入れた。
そして双葉は万事屋の一人になった。
それから一ヶ月ほど経とうとしていたある日のことだ。
遠方からの依頼で銀時たちは数日の間外出することになった。
「テメェも来いよ」
そう銀時に言われたが、双葉は頷かなかった。
数年ぶりに再会した兄は、二人の子供と同じ家で共に過ごしていた。
それは双葉から見ても全く違和感のない光景だった。
そう、自分よりも家族らしい家族のような仲の良さ。
その雰囲気に溶けこむのはイマイチできなかったし、彼女もそうはしなかった。
そんな理由もあって、双葉は行かない道を選んだ。つまり、お留守番である。
移動に使うという理由で、天人の少女は巨大な白犬も連れて行った。
だから今 万事屋には誰もいない。
双葉だけ。
たった独りの彼女を包むのは、真夜中の沈黙を破る激しい雨音だけ。
誰もいないせいか、珍しく今日は安らかに寝息を立てていた。
「………」
だが激しい雨音よりも別の何かによって、その寝息が突然途絶える。
――誰かいる……?
何者かの気配を感じた双葉は、枕元の刀を手に取り起き上がった。
――誰だ。兄者たちじゃない。
銀時たちは遠方の依頼で少なくとも二日は帰って来ない。それにこの気配の中には狂気が混じっている。
双葉は襖を開け、気配が強い居間へ入った。相手の位置を探るため神経を集中させる。
その途端、スッと気配は消えてしまった。
相手は自身の気配を消せるほどの腕を持っているのか、それとも気のせいだったのか。
「誰かいるのか」
双葉は強気な声で相手を探る。素直に返事をすると思えないが、刺激を与えれば少しは反応があるはずだ。
だがその直後に起きたのは、双葉が最も予想していないことだった。
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