群雄割拠の章
第2話 「だから対価を……払わなければならないの」
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願に成った。
そして、それはようやく果たされた。
けど……
「冥琳は……やっぱり不満?」
「不満など……いや、そうだな。まさか自分たちの手によってでなく、あの御遣いの……北郷の手で果たされるなど、思っても見なかったが、な」
「……そうね。うん、そう。わたしもね……あの時は、本当にびっくりだったわ」
わたしも冥琳も、孫呉の復活を望んでいることを、盾二に話したことはない。
けど、察しのいい盾二だもの。
『孫呉に来ない?』と最初に言った時から、わたし達が袁術に翻意を持っていることは感づいていたはず。
だからこそ、連合の時に袁術に呂布を押し付けるように助言もくれたし、すぐに合流して助けてくれるように左翼に展開するように言ってもくれた。
けれど……そこまでしてくれるだけでも十分なのに。
さらにわたし達の宿願だった独立のことまで考えてくれているなんて……思いもしなかった。
「あの人は……本当に天の御遣いなんだと思う」
「雪蓮……?」
「ううん。もちろん、あの不思議な力を見ればそうだろうって、誰もが思うだろうけど、ね。けど、そういう……意味じゃなくて」
「? では、どういう意味だ?」
冥琳が、訝しげな様子でわたしを見る。
「うん。あの人は、ね……対価を、受け取らないの」
「………………」
「だってそうでしょ? あの人に、わたし達は何をしたの? 劉備のような恩を与えたわけでもない。義勇軍で共闘したってだけの間柄でしかない。それなのに、ちょっと親しくなっただけでわたし達を気遣い、護り、袁術からの独立まで……」
「……ああ」
「そこまでしてもらって、さ。わたし達があの人に差し出したものは何? なにかあるかしら?」
「………………」
「なにもない……そう、なにもないわ。強いて言えば、わたしの真名だけ。まさしく無償ですべてを与えてくれる存在を、人はなんて言うのかしら?」
「………………」
天が無償で、わたし達に望むものを与えてくれる者。
そんな存在を……例え神仙であろうとも語り継がれたことがあったかしら?
「でもね。盾二は……それでも『違う』って言うの」
「? 何が『違う』んだ?」
「『自分は天の御遣いなんて者じゃない。自分はただの人だ』って。ほんと、笑っちゃうわよね。ただの人が、対価も求めずに人に手を差し伸べるものですかっての」
「……………………」
「それはもう、『人』じゃあないわ。人はそれを……『神』って言うのよ」
「雪蓮……」
そう。盾二が何を言おうと。
彼が何も求めず、わたし達に望むものを用意する以上、彼は人じゃない。
そうよ、『今のままでは』
「わたしは神を……好きになったわけじゃないわ」
「……………………」
「だから対
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