全ての予兆
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線を移す。すると、さっきまで穴だらけだった廊下が元の状態に戻り、壁はまるで傷がなかったかのように消えていた。
俺はすぐに神父の方へと振り向くが、そこには神父の姿がなかった。
『あの男の言っている事は気に食わないが、正論だな』
「どうする?セイバー」
誰にも聞こえないようにひっそりと話す。
『アリーナで鍛えさせてもらうか。マスターにもオレの実力をしっかり見物してほしいからな』
「分かった」
野次馬がそれぞれの場所へと散っていく中で俺はアリーナがあると言われている倉庫へと向かう。とりあえずセイバーと少しはコミュニケーションが取れるようになってきたのは大きな一歩だ。そしてそれが少し嬉しく、気分が浮ついた。
第一層 一の月想海
倉庫内に入ると、景色が変わった。殺風景な通路がずっと奥まで続き、言いようのない不気味な気配が道を覆っていた。ここがアリーナか…と辺りを見渡す。どうやら、すぐそこにはエネミーはいないようだ。
ふぅ…と安心した時だった。
「怖いか?マスター」
セイバーが片手に大剣を携え、鎧姿で俺の目の前で実体化して話しかけてきた。少しびっくりはしたものの、すぐに冷静さを取り戻して切り返す。
「いいや、これぐらいなら大丈夫だ」
ところで、と俺は言葉を付け足した。
「それ重くないの?」
俺が指すそれとはセイバーが身に纏ってる鎧の事だ。頭、胴体、手、脚、至る所まで完全防備された鎧が重くないはずがない。聞いたところによると鎧の重量は種類によるが30〜50キログラムまであるらしい。華奢な体の女の子がとても着れる代物ではない。
「これか?いや、重くはない」
「動き辛くはないのか?」
「ああ、多少はな。しかし、防御と攻撃が同時に行えるのはオレとしても有難いからな。そこは目を瞑っている」
さすがは英雄。戦いの事を分かってる。その知識があるだけで俺にとってはかなり心強い。俺がそう思った時だった。
「マスター、一旦話は区切ろう」
セイバーは片手の大剣を肩に担ぐと、前を向いた。最初は何を言っているかは分からなかったがすぐにセイバーの言葉の意味を理解する。
通路の奥から蠢く影があった。敵性プログラム。マスターやサーヴァントを鍛える為に用意されたプログラム。ゴクン、と生唾を飲み込む。鍛えると言っても聞こえは良いが、もしプログラムに負けたらそこで聖杯戦争の出場資格は失う。それどころか、死を迎える事になる。
「安心しろマスター。お前はオレが守ってやる」
「セイバー…」
頼む、その意を込めて俺はコクリと頷いた。
「それでは行くぞ、マスター!!」
「おう!!」
セイバーはエネミーに向かって、走っていく。俺も遅れながらで
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