禁断の果実編
第98話 Complicated
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踏み入れる。
「ここに光実が?」
『ああ。あそこだ』
全て使用されていないと思ったベッドの一つに、一人の人間が横たわっていた。
スーツ姿のその少年は、マスクらしき物を着けられ、微動だにしない。そして、その少年を、貴虎が見誤るはずがなかった。
「光実!」
貴虎はホールに飛び込み、光実が横たわるベッドに駆け寄った。
近寄って、光実が着けられたマスクが何かを吸い上げていることに気づいた。貴虎は光実のマスクを外そうとしたが、外れない。
貴虎はレデュエを顧みた。
「貴様、光実に何をした!」
『少し生命エネルギーを貰ってるだけだよ。言っておくが、これは彼自身が望んだことだからね』
話し声に反応したのか、光実がうっすらと瞼を開けた。
「光実? 大丈夫か、俺が分かるか!?」
「……にい、さん」
ああ、これは夢だ。
目を開けた光実は一番に思った。夢でなければ、貴虎が自分を救いに来るなどありえない。そうさせないために、あれほど拒絶して、心を念入りに折っておいたのだから。
(僕が今してることがバレたら、兄さんも紘汰さんも絶対僕を止めに来る。だから来てほしくなくて、先に嫌われるように頑張って演技したんだから。だからこれは、夢――)
「生命エネルギーなど何に使う。貴様らは人間の生命を食い物にする種族なのか」
『まさか。我らが食らうのはヘルヘイムの果実のみ。これはね、我らが王の愛する者を甦らせるためにやっていることだ』
「王? ロシュオ……死んだというロシュオの妃のことか」
『正解。何だ、オマエ、意外と知ってるんだ』
待て、と頭の片隅が警鐘を鳴らし始めた。夢にしては、光実が知らない情報が多すぎる。
『本当はもーっとたくさんの人間を集めてやる予定だったんだけど、彼が自分一人にしろって言うから。まあ、人一人なんて簡単に干からびるもの。それからまた新しいエサ集めに行けばいい話だ』
もしこれが現実で、レデュエの言葉が真実なら。
光実は一体何のために独りで戦い、自分を贄にしたというのか。
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