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地味でもいい
第二章

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第二章

「それはさ。それで彼女何処?」
「あれっ、今クラスにいるわよね」
「そうよね」
 ここで三人は顔を見合わせたのだった。
「って何処よ」
「何処にいるのよ」
 三人で顔を見合わせたうえで周囲を見回す。クラスの中を見回してもそれでも言うのだった。しかし何処にも見つからないのだった。
「いないって」
「まさか」
「いるじゃない」
 だがここで涼平が言うのであった。
「そこに」
「あっ、本当」
「確かに」
 三人は彼が手で指し示した方を見て納得した顔で頷く。そこに確かに彼女がいた。
 黒い髪の毛を左右で束ねている。そして顔には丸眼鏡がある。自分の席で俯いて本を読んでいる。それは何かのジュブナイル小説であった。
「何かいつもだからわからなかったわ」
「何処にいるのか」
「何でクラスにいるのにわからないんだよ」
 涼平はまた三人に対して突っ込みを入れたのだった。
「そこにいるのによ」
「まあ何ていうかね」
「誰にだって間違いはあるから」
「っていうか地味だからよ」
 こう軽い調子で返す三人だった。至って能天気な様子である。
「わかった?それ」
「わかったけれどわからないな」
 そんな三人に涼平が述べた言葉はこれであった。
「全く。あんた等クラスの何処を見ているんだよ」
「クラス全体見てるわよ」
「ねえ」
 一応こうは言う三人であった。
「ちゃんとね」
「ねえ」
「俺この高校に入ってから一番あてにならない言葉聞いてるんだけど」
 それが今だというのである。
「本当によ。まあとにかくいるんだな」
「ええ、見ての通り」
「いるわよ」
 今更そんなことを言う三人であった。
「あそこにね」
「ねえ不死身」
「結局その仇名かよ」
 今の三人の呼び掛けに呆れた声を出す涼平だった。
「他に何かいいのねえのかよ」
「そんなに悪くないわよね」
「ねえ」
 しかし三人は顔を見合わせてこう言い合うのだった。
「愛嬌のある仇名じゃない」
「それも強そうな」
「プロレスラーじゃねえんだぞ」
 彼はまた三人に対して突込みを入れた。いささか漫才めいている。
「そんなよ。如何にも腰にチャンピオンベルトを巻いているみたいなな」
「じゃあ魔性の闘魂?」
「あっ、それいいわね」
「確かにね」
 完全にああ言えばこう言うの三人であった。あまりよくない意味で実に女の子らしい。
「猪木様みたいでね」
「他には超人もいいんじゃない?」
「いっちばーーーーーーんってね」
「悪いが俺は馬場さんなんだよ」
 三人の悪ノリにむっとした顔になってきた涼平であった。

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