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相棒は妹
志乃「楽しい?」
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ああ!」

 俺は純粋に嬉しくて、ベッドに仰向けのまま飛び込み、伸びをする。この達成感。ハンパじゃない。ここまでやって来て本当に良かったと、改めて思う。

 その時、志乃が「あっ」という声を出したので、俺は志乃に何事か聞いてみる。

 「どした?」

 「兄貴、これ見て」

 俺はベッドから起き上がり、テーブル上のパソコンに目をやる。すると、そこには『歌い手』の『投稿日時が新しい順』で検索された結果が出ていた。勿論そこには俺達が投稿した作品が載っている。しかし――

 「これは……」

 「まさか、直後に同じ曲を投稿してくるなんて」

 志乃は、少し顔を引きつらせながらそう言った。

 今、その検索欄の一番上は、俺達ではない。俺達と同じ曲を投稿した投稿主の作品だ。しかも、投稿したばかりだというのに、パソコンのページを更新させるたびに再生数が増え、俺達の作品のものをあっさり抜かしてしまった。

 「マジで?」

 「……」

 俺はその状況に驚きが隠せず、苦渋の言葉が出る。いや、しょうがないだろ。だって、数多くある曲の中で、まさに同じ曲を同じ時間帯に投稿して、俺達より稼いでるんだぜ?そんな皮肉なミラクル、俺は想像してなかったよ。

 と、なんとなく隣の志乃を見てみると、そこには苛立たしげな顔をしている志乃がいた。目が合うと、志乃は顔を近づけてきて、一言発した。

 「拡散、して」

 その声には、俺の予想通り憤懣の念が込められていた。無理ない話だ。なにせ、同じ立場、状況下であるにも関わらず、相手の再生数の方が圧倒的に多いのだから。志乃からして見れば、完全な挑発だろう。

 「兄貴」

 そこで、俺は考えるのを止め、志乃の言われた通りにした。

 携帯を取り出し、ツイットーのアプリを開いた。拡散と言えば、SNSの他は無いだろう。元々ツイットーはやっていたので、使い慣れてはいたが、新しいアカウントを作るのは初めてだった。

 別に本垢で拡散しても良いかなと思ったのだが、現実の奴に知られてもつまらない気がしたので、あえて新垢を作る事にしたのだ。

 「兄貴、ツイットーやってんの?」

 「まあな」

 「私もやろう」

 「頼む」

 俺は新垢のアカウントのアドレスやハンドルネームを考える。まず、ハンドルネームはどうしようか。

 「志乃、俺のハンドルネーム付けて」

 「葉月」

 「えっと、なんだそれ」

 「葉山伊月の略称」

 「……あ、確かに」

 なんか現実にもありそうな名前だったので、俺はそれにした。しかも、何故か気に入りそうな始末である。これなら改名しなくてもやっていけそうだな。

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