志乃「楽しい?」
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そう言ってリビングに戻ると、そこにはいつもの景色が広がっていた。カラーボックスを頭に乗せながら夜飯のうどんを食べるばぁちゃん、夜飯の準備を進める母さん。俺がいつも目にする、平和そのものだった。
今のは無かった事にしておこう。志乃の悪戯、ホント性質悪いなー、はっはっは。
*****
風呂に入って疲れを取った後、夜飯を頂き、自室に戻ると、すでに志乃が機材の準備を終えていた。俺より早く風呂に入り、飯を食い終わった志乃は、勝手に俺の部屋でセッティングをしていたのだ。
俺を見ると、無言&無表情で手招きをしてくる。いや、もう部屋の目の前にいるんだから、そんなんやらなくても大丈夫だし。
とか思いながら、俺も何も言わずにそちらへ向かうと、志乃が顔色を変えぬまま、淡々と言葉を吐き出した。
「とりあえず、投稿準備出来た」
ここでまず安心したのは、志乃がまたとんでもない事を言わなかった事だ。つか、さっきのは一体何だったんだ……?
「えと、それで何時にすんの?」
「今」
「なるほど」
パソコンの画面にはすでにガヤガヤ動画の投稿ページが映し出されており、自分で編集を終わらせたのか、作品のファイル指定がされている状態だった。
「兄貴、投稿の部分押して」
「俺が?」
「それとも私がやろうか」
「い、いや。俺がやる」
俺はマウスを持って、『投稿』の部分にマウスポインタを置いたのだが――テーブルに置かれていた志乃の右手を、マウスを持っている俺の左手の甲に乗っけた。
「え?」
志乃は少しばかり驚いた顔をしたが、俺は特に緊張もせず、思った事を口にした。
「お前だってこれの作成者なんだから、一緒に押さなきゃダメだろ、やっぱ」
「……あっそ」
やはり素っ気ないものだが、俺は別にそれでも良かった。ただ、自分一人で全てを終わらせたくは無いのだ。これは、俺達の作ったものなんだからな。
志乃のややひんやりとした手が、左手を覆い被さっている。そして、俺は軽くクリックし、画面の表示を変えた。
数秒後、パソコンはのんびりと画面表示を終え、そこに『投稿完了しました』の文字を浮かび上がらせた。だが、すぐには実感が湧かず、俺は愚か、志乃までしばらく固まったままだった。
「投稿、出来た?」
突然志乃の声がして、俺はビクッとするが、直後に届いた投稿完了メールを見て、それが上手くいった事を知った。
「……やった」
思わず声に出してみた。実際のところ、直後に感動が生まれては来なかった。だが、それは結果が見えていないからの話であり、投稿が出来たのは紛れもない事実だった。
「よっしゃああああ!終わったあああ
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