第七章
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ーー」
そこにモモがやって来た。月夜の中に黒猫が一匹いた。モモの黒い毛は黄色い光を浴びて輝いていた。
「モモ」
「迎えに来たみたいだね、君のことを」
「うん、そうじゃないわ」
桃子には何故モモがここに来たのかわかった。
「お祝いに来てくれたのよ」
「お祝いに?」
「そうよ。あたしと堀君のね」
交際がはじまったことを。モモは祝いに来たのだ。人間ならこんなことが事前にわかれば何か得体の知れないものを感じずにはいられないがモモは猫である。それも黒猫だ。不思議な説得力があった。
「有り難うね、モモ」
「くぅ〜〜〜〜〜」
モモは桃子の足に自分の身体を摺り寄せていた。まるで彼女を祝うかの様に。達之はそれを見て自分も祝われているのがわかった。
モモは達之を見た。そしてにこりと微笑んでいるように見えた。
達之はそんなモモの顔を見てわかった。これは全部モモが導いたことだと。二人を引き合わせたのはモモであったのだ。
(恩返しなのかい?)
モモに目で尋ねる。
(あの時助けたから)
けれどモモはそれには答えなかった。ただ桃子に身体を摺り寄せて達之ににこやかに笑っているだけであった。けれどそれで充分わかることであった。二人と一匹はそのまま月明かりの下で揃って時間を過ごすのであった。
不思議な縁 完
2006・7・1
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