志乃「私としては――」
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ぶりに話した時、俺に平手打ちして目を覚ましてくれたじゃんかよ」
狭い知識の中で得た人間のタイプを話す。
「お前はピアノが上手い。それに、俺とは違って好きであり続けられるんだ。頑張れるんだ。そこに、物理的な力ってのは必要な事なのか?むしろ、あいつの方がピアノを弾くに相応しく無いだろ。こっちは八つ当たりされたんだから」
そこまで話して、志乃を抱く力を少し強めた。こうでもしないと、落ち込み続けた志乃がそのまま空気と一体化してしまうような気がして……。
だが、その時志乃が口を開いた。そして、不満の含まれた言葉を吐き出した。
「……兄貴に、何が分かるの」
「……」
「前に言ったでしょ。私は、兄貴を『復活』させるだけで、何かしてもらうつもりは無いの」
「その『復活』って何なんだ?俺はまだ、退学の尾を引き続けてるって事か?」
全てが静止したような俺の部屋。物音の一切無い空間で、俺達の声だけが空気を微振動させる。
「俺はまだ、志乃から見たら堕落した人間で、上から見られたくは無いって、そういう話だよな」
「……」
俺は特に何の戸惑いも無く、そう問うた。あくまで志乃を落ち着かせようと小さく言葉を発する。
志乃は少しして、再び小さな声で呟いた。
「……そう」
「……」
「私の中に、やっぱりそう思う自分がいた。それが嫌だった。殺したかった。でも、まだ私の中で踏ん切りが付いてなかった。私は、まだ兄貴を今までの兄貴だと思えてないの」
ものすごく申し訳なさそうに呟く志乃に、俺は少し悲しくなったが、それでも志乃の本心を知る事が出来て良かったと思った。そう思えたからこそ、次の言葉を瞬時に選び出す事が出来た。
「……素直でよろしい」
「……え?」
「ここで『兄貴めっちゃ大好き』なんて言われても疑問が残るだけだったからな。でも、そっか。お前、ホントに俺のためにここまでやってくれたんだな」
「……ッ」
ハッとしたような志乃の息遣いに内心で苦笑しながら、俺は言葉を紡ぎ出す。
「俺、嬉しいよ。どんだけ俺をバカにしようが何しようが構わない。俺をどう思ってたとしても。でも、本当に嬉しい。ありがとう、志乃」
「……」
「これから、もっと兄貴らしくなるから、これからも仲良くしてほしい。頼む」
何故、最初に謝った人間が最終的に礼を言う立場になっているのだろうか。自分でもそれが不自然に思えて仕方ない。でも、流れが流れだから、しょうがないと言える。俺は、自分勝手なまでに想いを伝えただけだ。
そして、ゆっくりと志乃の身体から離れていき、そこで再び時が止まった。俺も、今何故動きを止めてしまったのか理解出
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