第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第二節 決意 第一話 (通算第46話)
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団はティターンズに対する反感を募らせていた。
根っからのスペースノイドであるメズーンは、それもあって軍に居続けるのは限界だと考えていた。いっそ辞めたいという気持ちになるが、巷に仕事が溢れている訳でもない世相では、そうもいかなかい。戦後の復興ラッシュは地上にその資本が大量に投入されていて、宇宙は慢性的な就職難が続いていた。
サイド7には5年前、コロニー再建事業に携わる両親に連れられて移住してきた。技術者である両親はメズーンに技術者か研究者になることを望んだが、メズーンはパイロットの道を選んだ。それがそもそもの間違いであったのか。メズーンには、軍内部の差別――地球出身者偏重がこれ程のものとは想像もつかなかった。
仲間内には反地球連邦運動に参加している者もいる。エゥーゴと繋がり、移動を申請したいところだが、ティターンズの嫌疑を呼びかねない。家族に類が及ぶのは避けたかった。
「こうなりゃ、エゥーゴに攻めてきてもらいてぇもんだ!」
これは大尉の口癖である。誰もがティターンズへの反感を持っており、ティターンズのお膝元でそんなことを言ったら――などとは誰も思わない。連邦宇宙軍のガンルームには、ティターンズの連中は近寄りもしなかいからだ。例外がいない訳でもない。たった一人ではあるが、ティターンズでありながら、節度も礼儀もあるエリートらしいエリート――『選ばれし者』と呼ばれるに相応しい男がおり、彼だけはここに来ることを厭わなかった。
おっと、いけねぇ!メズーン、《御曹司》が呼んでたぜ」
「ありがとうございます。ではっ」
大尉の愚痴に付き合ってはいられない。謝辞と敬礼を返してガンルームを出た。
《御曹司》は、その唯一の例外であるティターンズの若手士官、レドリック・ランカスター少佐のことだ。コロラド・サーボ社の重役の息子であり、飛び級で士官学校を首席卒業、ティターンズから名指しで配属要請された若者である。それでいて、リベラルな考え方を持ち、ティターンズにおいて異彩を放つ青年だった。愛称はレド――カミーユやランバンとは士官学校の同期である。カミーユ等はハイスクール時代メズーンが主将をした空手部の後輩だった。
奇妙な縁であった。最初は二歳年少の佐官に反発もしたが、今では親友と呼べる間柄になっている。
それにしても、レドは暫く任務で〈グリーンノア〉を離れていた筈であり、待機中とはいえ、勤務時間に人を介して呼び出すのは不自然だった。
(急用か?)
何故か解らないが、胸騒ぎがした。
確かに仲はいいし、俺お前の間柄ではある。だが――
(行けば解るか……)
今、あれこれ考えたところで解決する疑問ではない。取り越し苦労ということもある。実際に会えば全て解ると、レドの公務室へと急いだ。
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