第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第二節 決意 第一話 (通算第46話)
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シャアが〈グリプス〉に潜入する数時間前まで時間を遡る。
「ったく、やってられんゼ!」
部屋に入るなり悪態をついたのはパイロットとしては最盛期を過ぎたであろうか、四十に手が届きそうな男である。階級章を見ると白い線が二本――連邦宇宙軍大尉だ。丁度、メズーン・メゾットはガンルームで待機中だった。
「メズーン!今日の演習は『お客さん』に優しくしろよ」
「はぁ…」
「どうしたんです?大尉どの。またやらかしたんですか?」
曖昧に気乗りしない風なメズーンを余所に、横から別のパイロットが冷やかす。男は仏頂面で、荒々しく背凭れを前にして椅子に座った。派手な音を立てて、椅子が男に抗議した。
「どうもこうもねぇ!いつから此処は大学のアクロバットサークルになったんだよっ」
「それはそれはお疲れ様デシタ」
冷やかしたパイロットの横を通過して、ヘルメットが唸りをあげて壁に叩きつけられた。幾度か弾んだあと、コロコロとメズーンの足許に転がった。仕方なく、機械的に拾い上げ、男に渡しに立ち上がる。
「ムキになって突っ掛かって来やがったから、軽くいなしてやっただけだっつーの!」
「ムキにならきゃいいのに…」
「なんか言ったか?」
じろりと大尉に睨まれて冷やかしたパイロットが首を竣めた。
サイド7駐留軍は今やティターンズの使い走りに成り下がっていた。サイド駐留軍はサイド政府の自治権拡大に伴い、多くが解体され、残っているのはサイド7駐留の第九機動混成師団をはじめとした極一部である。第九師団が保有するMSは三十機は全て《ジムU》であり、〈ルナツー〉鎮守府麾下の機体らしく、赤紫のボディーカラーで塗装されており、シールドには《L2》の文字が中陰紋の様に描かれている。
メズーンたちはティターンズの演習相手として駆り出されているのだ。大尉と呼ばれた男は本気で演習相手をしたために、新米の上級士官からドやされた――といか修正されたのだろう。『お客さん』という言い回しからして、どうも新しく赴任したパイロットたちが相手だった。パイロットたちはさすがに選抜されているエリートだけに、操縦技術は高い。しかし、大尉に言わせれば「実戦では役に立たない」ということになる。だからこそ『アクロバットサークル』などと揶揄するのだ。
軍司令本部庁舎に隣接した滑走路脇のエプロンにはMSデッキが併設され、管制塔と庁舎に接続している。軍の施設らしく無機質で民族性を排した中近代的な建造物であり、機能性と合理性を追及した非効率的な造りだ。遊びのない空間は人を圧迫するという逆説を具現化した建物とも言える。
ティターンズが〈グリーンノア〉と〈グリーンオアシス〉を接収してからというもの、サイド駐留軍の任務といえば、すべてティターンズの支援活動であり、〈ルナツー〉でも唯一スペースノイドの比率が高い第九師
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