第五章
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けてきた。
「ところでカラオケですけれど」
「何だ?」
「先輩歌うのってまたあれですか?」
「あれって何だよ」
「TMレボリューションですよね」
「まずはあれだよ」
先輩は上機嫌で答えた。
「あれですかっといくぜ」
「じゃあ俺はスピッツでも」
「相変わらずそれ好きだな」
「いい歌じゃないですか」
「まあな。それからTOKIOだよな」
「はい」
達之はTOKIOも好きなのだ。グループの中では山口が一番好きである。
「じゃあ俺はジャニーズはスマップでな」
「いつも思うんですけれど中居巨人ファンなのにいいんですか?」
「あいつファン辞めたらしいぜ」
「そうなんですか」
「今じゃ阪神ファンらしいぞ」
「また茨の道ですね」
「馬鹿っ、今じゃカープの方がそうだよ」
「そうでしたっけ」
「昔は全然逆だったのによ」
先輩は顔を苦くさせていた。とにかくカープが好きな人である。
「九十一年が懐かしいぜ」
「そうなんですか」
「あの時はなあ。本当によかったよ」
河村さんがそう言ったところでカラオケボックスの前に着いた。フリータイムとのことだ。カラオケボックスというのは不思議なもので田舎にあるものはいやに高い。だが都会、それもちょっとした街だとすぐに冗談みたいに安くなる。それが非常に不思議であった。
「そろそろ来るぜ」
河村さんは店の前で達之に対して言った。
「もうすぐですか」
「ああ、ほら来たぜ」
スカートの女の子とジーンズの女の子の二人連れがやって来た。
「!?」
達之は片方の彼女を見て目を丸くさせた。
「あの」
そして河村さんに尋ねる。
「彼女達、ですよね」
「ああ」
先輩はそれに答える。
「俺の彼女何回も会ってるだろ」
「はい」
その通りだ。スカートの女の子は紛れもなく先輩の彼女であった。それは見間違えようがなかった。それに達之も彼女を見ては驚いてはいなかったのだ。
問題はもう一人だ。先輩の彼女の横にるジーンズの女性、それは何と桃子であった。
「お待たせ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
達之と桃子は互いの顔を見て呆然としていた。
「待ったかしら」
「いや、丁度今来たとこだぜ」
河村さん達はそんな二人をよそに挨拶をしていた。長い髪に少し赤を入れた派手めの彼女である。大きな二重の目が印象的である。達之のタイプとは少し離れているが。
「おう堀」
先輩は達之に声をかけてきた。
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