最終話 芝生の上でその八
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「ねえ、これからね」
「あっ、何処か思いついたのかよ」
「芝生ね」
目の前のそこを見ての言葉だった。
「そこに行かない?」
「目の前の?」
「そう、そこでね」
こう四人に言うのだった。
「寝転がって。空見ない?」
「芝生かよ」
美優は琴乃の言葉を聞いて目の前のその芝生を見た。そのうえで目を何度か瞬かせてそのうえでこう言った。
「意外だね、こりゃ」
「そうよね、私もね」
言い出した琴乃自身もだった。
「芝生はね」
「なかったな」
想像していなかったというのだ。
「本当にな」
「そうよね。けれどね」
「いいよな、芝生」
美優は目を輝かせて琴乃に答えた。
「そこに寝転がってな」
「それでよね」
「お空見るか」
空を見る、するとだった。
何処までも青く澄んでいる、まるでサファイアを溶かして拡げた様に。もう冬の重苦しい雲は完全に消え去っていた。
その空を見上げてだ、美優は言うのだった。
「寝転がってさ」
「皆でよね」
景子も美優に言う。
「そうしてよね」
「ああ、そうしないかい?」
また言う美優だった。
「これから」
「いいわね、私はね」
「景子ちゃんは賛成だな」
「ええ、それでいいと思うわ」
今日行く場所はというのだ。
「皆で寝転がろう」
「私は言いだしっぺだから」
琴乃も笑顔で言う。
「勿論ね」
「それでいいんだよな」
「何処か賑やかな場所に行って遊ぶのもいいけれど」
「芝生で皆で寝るのもいいよな」
「学校のね」
その中で制服を着たままで、である。
「今日は暖かいし」
「そのこともあってな」
「そうしよう」
「私もね」
彩夏もだ、美優に目を細めさせて答えた。
「それでいいと思うわ」
「彩夏ちゃんも寝転がりたいんだな」
「ええ、芝生の上でね」
まさにそこでというのだ。
「そうしたくなったわ」
「そうか、それじゃあな」
「一緒に寝よう」
「私も」
最後に里香だった、里香も空を見上げて笑顔になっている。
「これまで芝生で寝転がったことはあまりないけれど」
「今日はか」
「暖かいし。芝生の上にいたら」
それで、というのだ。
「気持ちよさそうだし」
「里香ちゃんも賛成してくれてるんだな」
「そうよ。これでね」
「ああ、皆だな」
五人全員だった、まさに。
「賛成だな」
「じゃあこれで決まりね」
琴乃も笑顔で言う。
「これから皆でね」
「芝生で寝転がるか」
「うん、そうしよう」
こう話してだった、そのうえで。
五人で芝生、彼女達のすぐ傍のところに行った。そうしてだった。
その芝生の上で五人横一列になって寝転がった、五人それぞれの姿勢で。
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