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不思議な縁
第四章
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だけれど」
「今日はちょっと人と会う約束があって」
「実は私もなのよ」
 少し苦笑いになってこう述べてきた。
「あっ、そちらもですか」
「ええ。だからまた」
「はい」
 ここは分かれることになった。お互い約束があるのなら仕方ないことであった。
「また縁があったらね」
「ええ。じゃあ」
 二人は別れた。桃子はモモを抱いたまま家へと帰って行く。一人になった達之のところに丁度いいタイミングで河村さんから電話がかかってきた。
「おっ」
 達之はそれを受けてポケットから携帯を取り出す。携帯の色は鮮やかなブルーでこれにも気を使っていたのだ。
『おおっ、準備いいか?』
 やはり先輩の声だった。口調が明るい。
『そろそろ時間だぜ』
「あっ、もうそんな時間ですか」
 腕時計を見ればそうであった。どうやら桃子とあれこれ離しているうちに時間が過ぎたようであった。丁度いいと言えば丁度よかった。
『じゃあ待ち合わせの場所だけどな』
「はい」
『駅前の喫茶店な』
「あそこですか」
『ああ。あいつが彼女を迎えに行ったからな』
「もうですか」
『そうさ。それで合コンはカラオケでな』
「わかりました。ところで」
『何だ?』
「カープ、勝ったみたいですね」
『おっ、わかるか』
 それは彼の上機嫌ですぐにわかることであった。
『勝ったも勝った、大勝利だぜ』
 河村さんの上機嫌は続いていた。
『新井のホームランに黒田が完封してな』
「へえ」
 どうやら先輩にとっては会心の試合であったらしい。新井や黒田のファンでもあるらしい。
『もう少しでノーヒットノーランだったんだけどな。惜しかったぜ』
「そうだったんですか」
『六回に打たれちまったからな』
「それってあまりもう少しって言える状況じゃないんじゃ」
『おい、黒田だぞ』
 先輩はその突っ込みにムッとなっていた。
『黒田の実力だったら運さえよけりゃ何時でもパーフェクトなんだよ』
「はあ」
『はあじゃねえよ。何なら今度来いよ』
「球場にですか!?」
 そこまで言われて思わず困ってしまった。
「贔屓のリーグが違うじゃないですか」
『ああ、そうだったか。だったら仕方ないな』
「ですよ」
 これは何とか逃れることが出来た。内心ホッとした。広島だけでなくセリーグの試合自体に興味がないのだ。あるとすれば巨人が惨めに敗れる試合だけだ。それは観るだけで人々の胸に心地よいものを与える。かって太宰治は富士には月見草がよく似合うと言った。巨人には無様な負けがよく似合う。
『まあ野球のことはこれ位にしてだ』
「はい」
『待ってるぜ、駅前の喫茶店でな』
「わかりました、それじゃあ」
『ああ』
 これで電話は切れた。達之はそれを聞いて駅前に向かった。そして先輩が待っている
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