第三章
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あ」
それで言葉がわかる筈もなかった。困ってしまい首を傾げる。
「捨て猫か飼い猫かもわからないし。そもそもこんな猫見たことないぞ」
ずっとこの辺りに住んでいるが黒猫を見たのははじめてであった。それにどうにも人なつっこい。捨て猫でこれなら知っている筈だ。では何か飼い猫だと思うが果たして何処の猫かさえわからない。困ってしまった。
「御前、御主人とかいるんだろ?」
「くぅ!?」
だがその言葉には猫の方が首を傾げさせた。彼を見上げて首を傾げている。
「どうなんだ」
「アーーーーーーーオ」
それに応えたのだろうか。一言鳴くと彼から離れた。そして向こうへととことこと歩いていく。
暫く歩くと彼に顔を向けてきた。まるで誘うかの様に。
「どうしたんだ?」
「ニャーーーーーーー」
何となく言葉がわかった。来いと言っているかの様であった。
まだ時間がある。彼はそれについて行くことにした。猫の先導に従うかの様に道を進む。すると一件の家に辿り着いた。新しい立派な家であった。
「ここが御前の家なのかい?」
「ナーーーーーーーー」
彼を見上げて鳴く。そうだと言っているようである。
「そうか、ここが御前の家なのか」
「ニャーーーーーーー」
「飼い猫だったのか。それで新築の家となると」
引っ越して来た家だ。自分の家からは結構離れた場所にあるのでそれがわからなかったのだ。
「俺に自分の家を教えてくれたんだな」
「ニャーーーーーーン」
そうだと言っているみたいだ。
「済まないわ、わざわざそんなところまで」
「あら、モモ」
ここで後ろから女の子の声がした。
「!?」
達之はそれを聞いて後ろを振り返る。そこには長い、少し波がかった髪を今時に茶色に染めてラフなシャツにジーンズの女の子がいた。手にはバッグを持っていて。顔にはうっすらと化粧をしていた。
「先に帰ってたの」
「ニャーーーーー」
猫はその女の子の姿を認めると彼女の方へ駆け寄った。彼女の方もその猫を抱きかかえた。
「よしよし」
「あの」
達之は彼女に声をかけた。
「何!?」
彼女もそれを受けて彼に顔を向けてきた。目のパッチリとした可愛らしい顔をしていた。唇が少し厚いのが印象的であった。それが何処かに肉感的なものを見せていた。
「その猫貴女の飼い猫ですか?」
「そうだけど」
彼女はそれに応えた。
「それが何か?」
「ニャーーーーー」
猫がここで彼に対して親しげな鳴き声を出してきた。
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