第百七十五話 信長着陣その四
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「織田に頼みな」
「そして、ですか」
「尼子を再興させんとしてですか」
「我等に攻めてくる」
「そうしてきますか」
「そうなるであろう。実際にじゃ」
その山中のことをここで話した元就だった。
「既に播磨に人をやってな」
「織田家とですか」
「話をしていますか」
「そう進めておる様じゃ」
実際にというのだ。
「だからな」
「では今すぐにでも」
「攻めますか」
家臣達の間で声がしてきた。
「宇喜多を」
「そうしますか」
「いや、待て」
今でなくともいいと言うのだった、ここで元就は。
「まだよい」
「宇喜多攻めはですか」
「まだよいですか」
「よい、まずは山名を攻めるのじゃ」
山陰のそこをというのだ。
「そしてそのうえでじゃ、宇喜多の動きを確かに掴んでな」
「そこで、ですな」
「その時にですか」
「宇喜多を攻める」
まさにその時にというのである。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「まずは山名を攻めましょうぞ」
「そしてあの山中もですな」
「退けますか」
「そうせよ、もっともあ奴はしぶとい」
山中は、というのだ。とにかく敗れても敗れても息を吹き返してそのうえで体勢を立て直して攻めてくる。それでなのだ。
元就にしてもだ、こう言うのだった。
「ここで滅ぼせぬかも知れぬ」
「若しもです」
隆元が元就に言ってきた。
「山中が織田に逃げれば」
「そして尼子再興を願えばか」
「織田の後ろ盾を得ますが」
「そうなるな」
「そうなってもよいのですか」
「よい、どちらにしても織田家と戦になる」
これは避けられないとも言う元就だった。
「一戦交えて家を守る」
「そうされるが故に」
「そうなってもよい、とにかく今はな」
「山名を攻めてですか」
「少しでも力を大きくしていくぞ」
元就は隆元をはじめ己の家臣達に話した。そうしてそのうえで彼もまた兵を進めるのだった。毛利もまた動いていた。
だが、だ。元就は家臣達を下がらせて隆元達三人の息子達だけを残してからだ。彼等にだけはこう言ったのだった。
「織田信長のことじゃ」
「はい、あの御仁ですか」
「あの御仁のことですか」
「そうじゃ。戦は避けられぬとしてもな」
例えだ、そうであってもだというのだ。
「織田は強い、勝てぬわ」
「だからですか」
「織田家と戦になってもですか」
「勝てるとは思わぬことじゃ」
こう言うのだった。
「だから家を残ることを考えるぞ」
「毛利の家をですか」
「それをですか」
「何なら今まで手に入れた領地の殆どを手放してもよい」
そこまでしても、というのだ。
「家を残ることを考えるぞ」
「しかし父上」
元春がだ、父の言葉に思わず強い声で言った。
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