第百七十五話 信長着陣その三
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「すぐに備前に兵を送れ」
「そして、ですな」
「あの者を」
「うむ、討て」
まさにだ、そうせよというのだ。
「あの者はな。しかしじゃ」
「しかし?」
「しかしとは」
「あ奴は確かに信用出来ぬ」
宇喜多直家は、というのだ。
「全くな。しかしあ奴の弟は違う」
「忠家殿はですか」
「あの御仁は」
「兄とは全く違う」
だからだというのだ。
「だから別にな」
「命は奪わずにですか」
「そのまま用いますか」
「そうする、何かあっても討つのはあ奴だけでよい」
宇喜多直家、彼だけでだというのだ。
「その子もよい」
「宇喜多秀家殿ですか」
「あの若武者も」
「どうも父とは違うな」
その心がというのだ、彼にとって叔父にあたる忠家と同じく。
「心根はよい」
「だからですか」
「あの御仁も」
「命は奪わぬ」
決してというのだ。
「だからよい」
「ですか、それでは」
「今は」
「そういうことでな」
こう話してだった、そのうえで。
元就は今は自分に従っている宇喜多のことにも目を光らせることにした。従っていようとも裏切ると思えるからこそだ。
そうしてだ、次はというと。
「あと尼子の者達じゃが」
「山中ですか」
「あの者ですか」
「あの者にも気をつけるのじゃ」
こう言うのだった。
「あくまで尼子の再興を目指しておるからな」
「あの者は頑固ですな」
「まだ尼子を再興するつもりですか」
「もう滅んだというのに」
「それでも」
「世の中色々な者がおる」
ここでこうも言った元就だった。
「だからな」
「宇喜多の様な裏切りと謀りごとを常とする者もおれば」
「山中の様にあくまで主家に忠義を尽くす頑固者もいますか」
「それぞれ」
「そういうことじゃ。だがどちらもな」
宇喜多も山中もだというのだ。
「今は当家にとっては厄介な者達は」
「宇喜多は今は従っていてもですな」
「心から従ってはおらん」
元就は完全に見抜いていた、このことを。
「だからな」
「それで、ですか」
「そうじゃ、厄介者じゃ」
敵である山中と同じく、というのだ。
「敵と変わらぬ」
「では若し織田が西に進んできたならば」
「裏切るな」
間違いなくだ、そうするというのだ。
「そう思ってよい」
「そして山中もですか」
「あの者も」
「うむ」
やはりというのだ、織田が西に来た時には。
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