強いられた変化
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「記憶が次の戦で戻ってくれたらいいですけど……外史への取り込みが開始されたか、もしくは……」
ポツリと零された言葉には懺悔の色が浮かぶ。
モニターの中で蹲りながら、彼は笑みを浮かべていた。自分が誰かと、何度も心の内で自問自答を繰り返しながら。
「第一、第二の時のように取り込まれても世界が巻き戻る事はありません……が、継続されてきた時と同様、世界側は復元力たる人物を用意し始めています。二重雑種になったので、今まで一度も表舞台に出て来なかった人物が、徐庶の他にもう一人くらいは出てくるでしょう。呉に出るか、それとも蜀に出るか……それが問題です」
カタリ、と音を立てたキーボード。画面が分断されたモニターは二つの国の主を別々に映していた。
虎は断金と共にまだ傷の癒えぬ幼虎の会話を悩ましげに話し合い、大徳は伏竜と白馬の王と共に熱弁に華を咲かせていた。
良き哉、と頷いた少女はカタカタとキーを弾ませて場面を回していく。
西涼の雄と賢き悪龍、黄金の姫と無垢な幼姫……そして、覇王と道化師にまた戻る。
はぁ、とため息をついて、何処にも動きが無い事に不足を露わに零した。
「第三適性者である徐公明に対する復元力は誰になりますかね。今回の事象の徐晃……いえ、黒麒麟と言ってあげましょうか。アレに吊り合うレベルのモノは……いないと思いますけど。二つの勢力の間で揺れている時点で、正史演義の徐晃を滅ぼす“孟達”の役目すら奪ってますし」
確信めいた言葉には称賛が含まれ、滲み出る音は知性の鋭さ。
幾回も、幾回も繰り返されたこの世界と、無限とも言える数の外史を観測して来た彼女でさえ、たった一つの可能性を信じるしか無い。ここまで掻き回された世界は読む事が出来ず。
されども数瞬の後、ハッとして、口を引き裂いて笑った。
「出てくるなら……虎が為の豪弓か、それとも竜を継ぐモノ……ふふ、鳳統を大徳から奪った事で世界側の動きが制限されていますからね……やはり、順調です」
少女は目を瞑り、祈るようにぎゅっと手を握った。この壊れかけた世界を繋ぎ止める願いを込めるかのように。
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