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約束
第二章
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決めちまった。
 こうして俺は約束を果たした。そして結婚して今に至る。今じゃ里恵も大学を卒業して俺の側にいる。
「今日も早く帰ってよね」
「仕事次第だな」
 朝家を出る時にこう答えた。
「けど、なるべく早く帰られるようにはするけれどよ」
「お願いね」
 そう言う顔はあの時の顔と同じだった。あれから何年も経っているのに子供の頃の表情がそのまま残っていた。
「待ってるから」
「ああ」
 そして俺は仕事に向かった。今日もやってやる。あいつの為に。
「もう一つ約束があるんだけれど」
「今度は何だよ」
 俺は向かおうとする足を止めて尋ねた。
「子供・・・・・・だけれど」
「ああ、そのうちな」
 俺はこう言葉を返した。
「こればっかりはそうそう簡単には出て来たりしねえからな」
 何時までも変わらない子供のままだった。けれどそんなこいつだから俺は結婚した。
 約束を覚えていたのは里恵だった。けれどそれを守ったのは俺だ。守らされたと言ってもいいかも知れない。けれどそれでもよかった。少なくとも悪い気はしなかった。


約束   完


                 2006・5・1


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