第二章
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このままいったら将来は安泰だな」
「そうね」
里恵はにこにこと笑いながら頷いた。
「相手もいるし」
「相手!?」
「うん」
やっぱりにこにことしたまま答える。
「約束、覚えてるかな」
「何の約束だよ」
「ってとぼけちゃって」
「とぼけてる!?俺が!?」
「そうよ。ほら、私が十歳の時」
「十歳の時」
「それで高校入った時。覚えてるわよね」
「御前が十歳の時って」
言われながら頭の中で俺の歳と合わせて計算した。
「俺が中二の時だよな」
「それで二年前は」
「俺は二十歳だ」
「その時言ったじゃない」
「俺が!?」
「相手が働いている時に。結婚すればいいって」
「おい、待てよ」
何かやばい雰囲気だった。
「それって俺が御前と」
「そうだよ。結婚しない?」
「って従兄妹同士でか」
「従兄妹同士でも結婚出来るよ」
「俺と御前がそんなの言ってもな」
「うちのお父さんとお母さんはいいって言ってたよ」
何時の間に。それを聞いて顎が外れそうになった。
「なっ」
「あとはお兄ちゃんの方だけだけどそっちはどうとでもなるよね」
俺の親父もお袋も早く結婚しろとは言うが相手はどうしようもない女じゃなきゃいいって考えだ。ましてやこいつは俺の親にも受けがいい。よくいいお嫁さんになるとまで褒めちぎってやがる。それで向こうの親が話をしたらどうなるか。もう言うまでもないことだった。
「何てこった」
「紙はまだ持って来てないけれど」
「それを言いに来たのか」
「私じゃ駄目かな」
里恵は身を乗り出して俺に尋ねてきた。
「ずっと。何年も待ってたんだし」
俺の目を見て言ってきやがる。それは反則だと思った。目を見られて断ることが出来る奴はそうはいない。ましてや俺みたいにそれ程女を知らない奴にやったら。負けるに決まっている。
「お料理とかお洗濯も出来るし」
「断るなってことだよな」
せめてもの反抗だった。こう言ってやった。
「別にそんなのじゃないけど」
「俺に断る理由もねえしな」
「えっ!?」
それを聞いて思わず顔をあげた。その時の顔は多分一生忘れないだろう。
「それってつまり」
「俺なんかでもいいんだよな」
俺はこう問うてやった。
「俺でも。どうなんだよ」
「お酒・・・・・・入ってないよね」
「サイダーを酒って呼ぶんなら入ってるぜ」
「それじゃあ」
「いいよ、それで」
俺は言った。
「俺の方だってよ。そこまで想われてたらよ。悪い気もしねえし」
「いいんだよね」
「何度も言わねえぜ」
俺はまた繰り返した。
「俺の方こそ。宜しくな」
「うん」
その時里恵は本当に明るい笑顔になった。太陽みたいに明るいって言えば大袈裟だが本当に明るい笑顔だった。その笑顔が全てを
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