第一章
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学から高校、そして大学に入った。何事もなく過ぎていった。
気がついたら成人式に行って二十になっていた。ここでまたあいつが出て来た。
「ねえ」
里恵は高校に入って暫く経っていた。秋に法事で集まっていた時に俺に声をかけてきた。
「ん!?何だよ」
一族の者が集まっての飲み食いの後で一息ついていた時だった。俺は一人部屋に戻って残った酒を飲みながら一息ついていた。俺は黒い葬式用に使う服を着ていた。里恵は学校の制服でブレザーだった。法事に出るには少しどうかと思う赤いブレザーに赤と青の派手な柄の丈の短いスカートだった。靴下は黒のハイソックスだ。髪はもう茶色に染めていて完全に今時の女子高生になっていた。そんな里恵を見て俺は何を思うわけでもなかった。
「あの」
「何だ?飲みたいのか?」
俺はこっそり酒でも飲みたいのかと思った。まだ開けてないビール缶を一つ差し出した。
「よかったらどうだ?」
「あたし飲まないから」
「そうなのか」
じゃあ別のものかと思った。
「煙草か?」
俺は思ったことをそのまま口にした。
「悪いけどな、俺は煙草はやらねえんだ」
高校の頃ツレに勧められてやってみたことはあるがあまりにも咳き込むので止めた。それ以来一度も吸ったことはない。正直あれの何処がいいのかわからない。だから俺は二十になっても酒だけだ。もっともこれは二十になる前から知っていて親に隠れてやっていたが。
「それも違うよ」
「じゃあ何なんだよ」
俺はこいつが何で来たのかわからなくなってきた。
「クスリとかシンナーだったら絶対に止めろよ」
「そんなのしてないから」
「そうだよな」
馬鹿なことを言ったと思った。こいつはそんなことをする程馬鹿じゃなかった。
「ジュースでも飲むか?」
見ればビールに混ざって缶ジュースがあった。林檎のジュースだった。
「これでよけりゃ」
「もらっていい?」
「ああ」
俺はそのジュースをやることにした。里恵はクッションを持って来て俺と向かい合って座った。正座だった。
「で、どうしたんだ?」
俺は砕けた姿勢のまま飲み続けていた。そして尋ねた。
「何かやけに物々しいけれどよ」
「前の話、覚えてる?」
「話!?」
俺は酔った顔と頭を捻った。
「何時の話だ?」
いきなり言われてもわからねえ。そもそもこいつと話をしたのかどうかさえ覚えちゃいない。最近話した記憶がないので何年前の話かとも思った。
「私が十歳の時の話だけれど」
里恵は畏まって言った。
「覚えてるかしら」
「つっと六年前か」
中学生の時だ。その時の記憶なんて殆ど残っちゃいない。
「どんな話したんだっけ」
「結婚だけれど」
「結婚」
「私と陽一兄ちゃんが。結婚するって話」
「お、おい」
そういえばそ
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