第五章
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第五章
「恋する二人は結ばれないとね」
「ロマンチストなんですね」
「人間誰だってそうじゃないんですか?」
今の私の言葉には顔を崩して笑ってみせた。まんざらではないようだ。
「だってね。こういった場合はやっぱり幸せにならないと」
「同感ですね」
そして私も。私もマスターと同じロマンチストなのかな、と心の中で顔を崩して笑った。そう言ってしまえば誰も彼もが同じだ。マスターが今言ったように。
「ところでですね」
「はい」
またマスターの言葉に顔を向けた。
「これからどうされるのですか?この街で」
「可愛い女の子を引っ掛けて遊ぶか観光をしようかと思いましたがそれは少し休ませてもらおうかな、と考えています」
「左様ですか」
「はい、とりあえずのところは」
笑ってそう言葉を返した。多分屈託のない、私にしては珍しい笑みになっていたと思う。
「というわけで今はこれで」
「お帰りになられるのですか」
「ええ。また機会があればこちらに御伺いさせて頂きます」
「はい、縁があれば」
マスターも笑顔で私に言ってくれた。その一目見たら忘れられない大きな笑顔で。
「御会いしましょう」
「では今日はいいお話を有り難うございました」
「いやいや」
お金を置いて店を後にする。そうして街を少し歩いていると花屋の前を通り掛かった。不意に紫色の花が目に入った。
「紫か」
すぐにさっきの話を思い出した。その紫を見てみると。
ムラサキツメクサだった。これはまた奇遇なと心の中で呟いた。
「話を聞いてすぐか」
「はい?」
私の声を聞いたのか店の中から一人の女性が姿を現わした。
「この花でしょうか」
「あっ、いや」
今の言葉を打ち消そうとしたがその女性の顔を見てその言葉を引っ込めることになってしまった。何とその女性というのが。
黒というよりは紫の髪と瞳を持つ美しい女性だったのだ。まるでさっきの話のイハマのように。いや、話に聞いたイハマと全く同じ顔だったのだ。
「何でもありません」
「そうですが」
「ですが」
ここで私はまた花を見た。これこそ何かの縁だと思ったのだ。
「そのムラサキツメクサですね」
「これですね」
「頂けませんか?」
そう女の人に申し出た。
「一つ。実家まで送って」
「運送料は別ですが宜しいですか?」
「はい」
そんなことは問題にはしなかった。むべもなく頷いた。
「御願いします、それで」
「わかりました。それでは」
住所を書いてそれと花代、運送料を払った。そうして花を送ってもらった。
「有り難うございます」
「いえ」
その女性の店員さんの御礼に応えた。
「こちらこそ。いい花を見つけることができました」
「はあ」
「ところでですね」
僕は彼女に言う
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