Episode29:九校戦、開幕
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一高がなぜ、前々日の昼間という早い時期に現地入りしたのか、それは夕方に開かれる立食パーティのためである。
これから競い合う相手同士で開催されるパーティは、やはり和やかさよりも緊張感が場を支配する。
「だから、本当は出たくないのよね、これ…」
という、真由美の生徒会長にあるまじき発言を近くで聞いていた達也と隼人は礼儀正しく聞かないことにした。
とはいえ、隼人自身、こういった華やかな会場にお客様のように扱われた経験があまりないため帰りたいと思っているのが本音である。少なくとも、目がチカチカするような場所でチビチビと飲み物を飲んで時間を潰しているよりはウェイターとして動き回っていたほうがいいと隼人は思っていた。
パーティのドレスコードは各学校の制服。そのためあれこれ悩まなくていいのは良かったのだが、如何せんなぜか今日は体調が悪い。
バス酔いはあまり尾を引くほどでもなかったのだが、なぜかこの場所に足を踏み入れてから気分が優れなかった。
「はぁ…」
いつもの生徒会メンバー+風紀委員の三人以外は既に会場に入っている。なにやら達也と深雪が雰囲気を作っているが、隼人はそれを溜息をついて見ないフリした。
「さあ、行きましょうか」
なにやら吹っ切れた様子の真由美を余所に、隼人はこれから数時間の間続く苦痛をどう凌ごうか思案するのだった。
☆★☆★
結局、隼人がとった解決策は誰とも関わらず隅っこでおとなしくしていることだった。手に持ったグラスを弄びながら、普段の半分ほどまでに閉じられた瞳で周囲を睥睨する。
が、目に入ってくる活性されたサイオンの輝きに吐き気を覚えて目を瞑った。
(…無頭竜を警戒して少し視力を上げてたけど、コンディションを悪くするくらいならオフにしたほうがいいな)
次に見た世界に、目が眩むほどの輝きはなかった。
「あれ、隼人かい…?」
「……ん?」
少し残ったオレンジジュースを飲み干した時だった。左方向から聞こえてきた声に顔を向ける。
「おー、久し振りだねよっしー」
「僕の名前は幹比古だ」
あだなが気に入らないのか、顔を顰めて訂正したのは吉田幹比古。隼人の昔馴染みで、今は一年E組の生徒だった。ちなみに『よっしー』とは隼人がつけたあだなである。
「隼人が一人でいるなんて珍しいな。どうかしたのかい?」
「あー、うん。ちょっと体調が悪くてね。でも風邪とかではないから大丈夫かな」
苦笑いを浮かべて肩を竦めた隼人に、幹比古は不思議そうな表情を浮かべた。
「そうかい? 君はかなり注目されてるみたいだけど、無理はするなよ」
「注目? 俺が?」
キョトンとして首を捻る隼人に、幹比古は思わず額に手を当てた。
「そういえば
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