Episode29:九校戦、開幕
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が鳴らされ、競技が始まった。
「自爆戦術?」
呆れ声で呟いたのはエリカで、声も出なかったのは達也、そして隼人は苦笑いを浮かべていた。
スタートの直後、四高の選手がいきなり後方の水面を爆破したのだ。恐らく、波を作ってサーフィンのようにして推進力に利用し、ついでに他選手を撹乱しようとしたのだろうが、自分も巻き込まれるような大波を作ってどうしようというのか。
「あっ、持ち直したぜ」
どうやらボードから落ちるということにはならなかったようだが、スタートダッシュを決めた摩利とはかなり差がついてしまっていた。
「硬化魔法の応用と移動魔法のマルチキャストか」
魔法式ではなく、摩利の姿勢やボードの動きを見て達也は摩利が何をしているのかを見抜いた。
「硬化魔法?」
問いかけてきたのはレオ。自分が得意とする魔法だけに、興味を持ったようだ。
「なにを硬化してるんだ?」
「ボードから落ちないように、自分とボードの相対位置を固定しているんだ」
それだけで、隼人も摩利がなにをしたのかを理解した。
要は、十字の道化師の魔法師が隼人の動きを止める為に用いた硬化魔法と同じことだ。
隼人と地面を一つのオブジェクトとして、その相対位置を固定することにより、隼人の体と地面を一つの『もの』と定義している。摩利の場合は、摩利とボードを一つの『もの』と定義し、それに移動魔法を掛けている。
更に、摩利は常駐ではなくコースの変化に合わせて持続距離を定義し、前の魔法と次の魔法が被らないようにうまく段取りしている。隼人も中々に硬化魔法を扱うため、それが高度な技術なのだと理解できた。
「隼人…?」
「ん? ああ、ちょっとボーッとしてた」
どうやら考え込んでいたのだろう、心配そうな声で自分の名前を呼ぶ雫に、意識を思考から水路に向ける。
摩利の姿は、少し目を離した内にスタンドの陰に入って見えなくなってしまっている。視線を大型ディスプレイに移す。
水路に設けられた上り坂を、水流に逆らって摩利は昇って行く。
「加速魔法だね」
どうやら、外部から受けた加速のベクトルを逆転させる術式のようだ。
「振動魔法も併用しているのか」
同時に、逆位相の波を作り出して造波抵抗を弱める魔法も使われている。
「凄いな。常時、三種類から四種類の魔法をマルチキャストしているとは」
達也の口から、自然に称賛の言葉が漏れた。それに隼人も同意だった。
摩利の使用している魔法の一つ一つは、それほど強力なものでない。ただ、その組み合わせが絶妙だった。
臨機応変、多種多彩。
(まったく、うちの先輩方は高校生じゃないみたいだ)
近く、自分もそう認定されることも知らず、隼人は内心で先輩たちの評価を
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