Episode29:九校戦、開幕
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くさかったのを、達也は悟る。
と、その後ろでは雫が小声で隼人に種明かしをしていた。
(ふんふん…ほのかが、達也を、ラブ、と…ええええ!?)
(静かに…! バレる)
(ご、ごめん…でも、そうなんだぁ)
「……その分、練習も付き合ったし、作戦も一緒に考えたし、決して仲間外れにしているわけでは…」
言い訳しながら、どんどん泥沼に嵌っていくような気がして口ごもる達也と、友人の諸事情を知って驚く隼人にそれを諌める雫。
幾ら鈍感な隼人でも、種明かしをされればほのかがいじけている理由も理解できた。ついでに、達也はそのことに気づいていないということも。
「達也さん、ほのかさんはそういうことを言ってるんじゃないんですよ」
と、ほのかを不憫に思ったのか、美月が口を挟んだのを皮切りに、
「お兄様…少し、鈍感が過ぎると思いますよ?」
深雪が、
「達也くんの意外な弱点発見」
エリカが、
「朴念仁」
雫が、次々と達也を責めたてた。
「雫さん…? あの、なんで俺は足を踏まれているのでしょう?」
そう隼人が言うと、雫に複数の同情の眼差しが向けられた。それに、首を傾げるしかできなかった隼人。結局、競技開始まで達也は女性陣からの集中砲火に耐え、隼人は雫に足を踏まれ続けるのだった。
☆★☆★
コースの整備が終わり、選手がコールされた時、達也はようやく解放された。隼人はまだ踏まれたままだったが。
なんか、もういいやという気持ちになった隼人は、雫の発するオーラに気圧されながらもスタートラインにたゆたう四人の選手に目を向けた。
少々狭めのコースの中側に、他の選手が膝立ちでいるのに対して、摩利は真っ直ぐに立っていた。
「うわっ、相変わらず偉そうな女…」
エリカの呟きを聞きながら、隼人は苦笑いを漏らした。摩利の性格はよく知っているつもりなので、少しだけエリカに納得できる部分があったためだ。それに、エリカと摩利の間に何か確執があることも知っている。好意には疎いが、因縁や負の感情には鋭いのが九十九家の男だ。
と、選手紹介のアナウンスが摩利の名を呼んだ途端、黄色い歓声が特に最前列付近の客席を揺るがした。手を挙げて応える摩利に、黄色い絶叫が更に音量を増した。
「……どうもうちの先輩たちには、妙に熱心なファンが付いているらしいな」
「だね…しかもなんか会長も委員長も対応に慣れてるよね」
「分かる気もします。渡辺先輩は格好良いですから」
異論はない、と隼人は浅く頷く。だが、確かに格好良いが、それを言ってしまったら深雪さんは大変なことになるんじゃ…? というのが偽らざる本心だったが、敢えてそれは言わなかった。
『用意』
スピーカーから、合図が流れる。空砲
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