Episode29:九校戦、開幕
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」
「うん。多分、予選から大魔法は使わずにお得意の精密射撃をしていくんじゃないかな?」
里美スバルの言葉を隼人は肯定する。エルフィン・スナイパーの名を取るくらいだから、やはり精密な射撃を得意としているはずだ。
(森崎君、ちゃんと見てるかな? 彼にとってこれは良い刺激になると思うんだけど…)
森崎は隼人のアドバイスを受けてクイックドロウを極めようとしている。早撃ちには威力は必要ないが、命中力は重要だ。いくら素早く魔法行使ができても、当たらなくては意味がない。
だから、真由美の精密射撃は必ず森崎にとってプラスになる。そう思っての心配だったのだが。
(あ、いた。どうやら心配はいらなかったようだね)
後列中央、一番見やすい席に森崎とその友人の数名が陣取っているのを見て隼人は笑みを浮かべる。まだ少し傲慢さは残っているようだったが、彼なりに強くなろうとしているらしい。
「それにしても、会長って凄い人気よね」
「そうだね。会長をネタにした同人誌があるくらいだし」
どーじんし? と聞きなれない言葉に首を傾げる隼人に、英美は知らなくていいわよと呆れ声で言った。彼はわざとではなく素でそれを言っているのだから、健全な男子高校生よりも少し遅れているらしい。
ちなみに、隼人と鋼を基にした薄い本も出回っているとかいないとか。
「始まる」
隼人の声を合図としたかのように、会場が静まり返った。二人の選手が構えるのは、単発小銃のように細長い競技用CAD。
(さて…)
隼人が視力を引き上げるのと、開始のシグナルが点ったのは同時だった。
軽快な射出音と共に、クレーが空を舞った。
「速い…!」
スバルが思わず唸ったのは、そのクレーの速度か、それともそれを打ち砕いた真由美の技能故か。
クレーの射出数の平均は、三秒に一個。その上、それが緩急をつけて選手を翻弄する、のだが、真由美は動揺することなく全てを撃ち抜いている。
(ドライアイスの亜音速弾に、知覚魔法のマルチスコープ、ね。あの四次元の射撃はマルチスコープの恩恵によるものか)
真由美の使用している魔法は、ドライ・ブリザードを応用した減速・加速系統のもの。
そして非物質体や情報体を見るのではなく、実体物をマルチアングルで知覚する、視覚的な多元レーダーの様な『マルチ・スコープ』。
この技能は先天性スキルであるが、隼人の『マルチ・タスク』のように努力すればある程度ならば取得できるものだ。
と、隼人が分析している間に試合は進み、五分間という時間はあっという間に終わりを告げた。真由美の、パーフェクト勝利という結果を以って。
「やった!パーフェクトだよ隼人!」
「見てた! 見てたから揺らすのはやめてくれぇ!」
興奮してか、肩を掴ん
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