Episode29:九校戦、開幕
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君は朴念仁だったね……君の噂は色んなところから聞くよ。特に、三高はかなり警戒しているみたいだ」
「三高…ああ、一条の御曹司とカーディナル・ジョージがいるところだね。それは光栄なことだけど、あまり注目されるのもよくないかなぁ」
隼人が今回出場する種目は新人戦のモノリス・コードと男子アイス・ピラーズ・ブレイクの二種目。その内の二つともが三高のエースであり、十師族に名を連ねる『一条』の御曹司・一条将輝も出場するというのだ。
だから、隼人の考えとしてはなるべく地味に行って相手の意表を突くというものだったのだが、どうやらその作戦は既に実行不可能となっているようだった。
「…ま、最初からそんな作戦はアテにしてなかったけどね」
「ん? なにか言ったかい?」
幹比古の問いかけに首を振って、隼人は小さく溜息をついた。
「…ところで、幹比古はなんでここに?」
「いや、エリカに無理やりウェイトレスをやらされてね…」
げんなりした表情で言う幹比古に、隼人は思わず吹き出してしまった。
「似合ってると思うよー」
幹比古にとってはちっとも嬉しくない言葉を無邪気な笑顔で言って、隼人は背中を預けていた壁から離れた。
「あと、早く仕事に戻らないとエリカに怒られると思う」
慌てる幹比古の持つトレイからジュースの入ったグラスを取って、隼人は幹比古と別れた。
☆★☆★
「大分気分はよくなってきたかな…」
痛みが引いてきた頭をペシペシと叩く。どうやらこの体調不良はそう長引くものではなかったらしい。俺の出場する新人戦が始まるのは四日目からだけど、早めに治しておくに越したことはないからね、良かった良かった。
よっしーから受け取ったグラスを傾けて、葡萄ジュースで喉を潤す。その、油断した時だった。
「九十九…隼人……」
「っ!?」
背後から掛けられた地を這うような低い声に、全身が総毛立った。脳が危険だと、振り向くなと警鐘を鳴らす。
「…お前が、九十九隼人か。貧弱、そうだな」
殺気、殺意、それすらも感じられるほどのプレッシャーが背後から掛けられる。
このままだと奴の気に呑まれる。それだけは避けなければ。
「…随分とご挨拶だね。何者かはわからないけど、礼儀も知らないほど常識がないのかい、君は?」
背後にいるヤツはなにも言わないが、突き刺さるような殺気は影を潜めた。それを感知して、振り向く。
「……ク…その、自信あり気な顔を屈辱に歪めさせる時が、楽しみだ…」
色素が抜け落ちた白い髪、不気味なまでに黒い瞳、そして全身に纏った敵意と殺意のコート。
朱色のブレザーが翻る。僅かな笑い声と共に、ヤツは人混みの中に消えて行ってしまった。
「朱色の制服…三高か。とい
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