第6章 流されて異界
第97話 ここは何処、私は誰?
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これぐらいで勘弁して上げるわ」
何故か妙にエラそうなハルヒの台詞。やれやれ。ようやくこの我が儘娘から解放される時間がやって来たか。所詮は次の休み時間までの短い自由なのですが、それでも、その自由な時間に妙な清々しさのような物を感じる俺。
しかし、その言葉の後、
「いい、有希。昼休みに用事があるから部室に集合ね」
……とハルヒは続けたのだった。
そう言えば、資料には涼宮ハルヒが中心となったクダラナイ部活動についての記載も有りましたか。
もっとも、この学生時代と言うのはそんなクダラナイ時間の積み重ね。完全に社会に出て仕舞う前のモラトリアムな期間。
俺だって、この四月までは普通に……。表の時間は普通に学生を続けて居ましたから、部活動に関してはどうこう言う心算は有りません。
それに、ようやく新しいオモチャに興味を失ってくれた事について、素直に安堵する俺。
この世界に関しては、ハルケギニア世界に帰れるまでの短い期間の滞在で終わるはず。そんな世界で多くの人間の印象に残るような行動を取る訳には行きませんから。
所詮俺は仮初の客。元の暮らしていた世界に帰るその日までの短い期間、この世界に留まるだけの旅人に過ぎない。
もっとも、ハルヒの所為で妙に目立って仕舞ったのも事実なのですが。
そんな、少し郷愁にも似た感情に包まれる俺。
しかし、現実は何時も苛酷。少しセンチに成った俺の事など誰も……。特に、この目の前の少女が慮ってくれる訳などなく、
「その時は、そいつを逃がさないように連れて来るのよ。いいわね、有希」
ビシリっと言う擬音が聞こえて来そうな雰囲気で俺の事を指差すハルヒ。妙に繊細で可憐な雰囲気のある指先で顔の中心を射抜かれているようで、かなりドキリとさせられた。
しかし……。
しかし、どうも、妙に気に入られて居たと言う事なのですか。
俺の異世界同位体が――
本当に、何をやって……。
ここまで気に入られたのか。少し寄り目で突き付けられた指先を見つめながらそう考える俺。
しかし、その考えは直ぐに否定。異世界同位体であろうが、この俺自身であろうが、別に男性としての魅力で彼女に気に入られた訳ではない可能性に考えが至ったから。
何故ならば、ハルヒの周囲に居る人間の顔ぶれを見ると、彼女が気に入っているのはその人間たちの見た目や行動、言動などではなく、もっと別の部分の可能性が有りますから。
本人……涼宮ハルヒはそうとは気付いていない。しかし、特殊な事情を持った人間ばかりですからね。今の彼女の周りに居る人間は。
そんな事を考えながらも、長い黒髪を颯爽と翻して大股で歩み去るハルヒの後姿を見送る俺。
その瞬間。
微かな花の香りが俺に近付
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