第6章 流されて異界
第97話 ここは何処、私は誰?
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不自然なほど明るい人工の光。そして、やけに湿気の多い空気の中でコツコツと言う板書の音が響き続ける空間。
名前と生き方が変わる前の定位置。窓側の一番後ろの席から眺める世界。
静かな。本当に静かな教室。
教壇の上では教科書を片手に壮年の男性教師がひたすら黒板に教科書の中に書かれた物を板書し続けると言う、およそ授業とは名ばかりの独り劇を演じ続け、
授業中は無個性に授業に没頭し続けるべき生徒たちも、ある者は退屈そうにぼんやりと外を眺め、またある者は律儀に板書された教科書の内容をそのまま自らのノートへと書き写し、ある者は夢の世界で勉学に勤しんでいる。
何処にでもある授業中の一風景。
俺も、元々暮らして居た世界では、当たり前のように毎日体験し続けていた世界。
もっとも、どうやらこのクラス。1年6組に関しては、その当たり前と言うのが当てはまらない個所が幾つか存在して居るのですが。
おそらくこのクラスは、ある種の問題児たちを一か所に集めたクラスなのでしょう。
そう考えて、ぼんやりと見つめるだけで有った教室内の情景から、自らの手元に開いた資料の方に改めて目をやる俺。
其処には五人の女生徒たちの説明が為されていた。
一人目は一時限目の授業の前に俺に掴みかかって来た涼宮ハルヒと言う名前の少女。
二人目はその俺に掴みかかって来たハルヒを羽交い絞めにして引きずって行った人工生命体の少女朝倉涼子。
この二人に関しては、既に修正済みの過去。三年前……一九九九年七月七日の夜に起きた、と言われているハルヒと外なる神の接触が起こらなかったこの世界では、涼宮ハルヒは躁鬱が激しいだけのごく普通の少女で有り、朝倉涼子は仙族系の人工生命体『那托』の少女と言う設定に成って一般人に紛れて生活を続けて居る状態。
但し、ハルヒに関しては異世界の事とは言え、シュブ・ニグラスの因子を植え付けられた、と言う事実は世界改変に関係した人間たちの記憶や記録には残って居り、このまま、彼女が天寿を全うするまで監視対象とされる事は決まって居り――
朝倉涼子に関しても、自らの存在……人工生命体だと言う事がその内に伝えられる事と成るらしいのですが、それまでは監視対象とされる事が決まっているらしいです。
もっとも、彼女らふたりの立場から言うのなら、こんな非人道的な事が許されるのか、と言う言葉が出て来ても不思議ではないのですが……。
但し、それでもこれは仕方がない部分も存在している。……と言うか、地球に生を受けた生命体に取っては、至極当たり前の処置と言うべきですか。
少なくとも、両者とも存在自体を消去されて居たとしても不思議ではない立ち位置でしたから。
今年の七月七日の夜までは。
何故ならば、一
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