第六十八話
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ったらしい。
「へぇ、君もあの絵本知ってるんだ。じゃあそれにしましょ! じゃ、君の名前は今からトンキーだからね!」
「よろしくお願いしますね、トンキーさん!」
「トンキー、しっかりあたしたちを運びなさいよね!」
女性陣の命名と声援を受けたからか、今までずっと無言だったクラゲ邪神――トンキーが声を張り上げた。さらにあたかも犬が飼い主に尻尾を振るかのように、象の耳のような部位がわっさわっさと震えていた。……こいつはオスだと思っておく。
――そして突如として、トンキーの身体がグラリと大きく揺れた。それとともにトンキーの背後から巨大な水柱が炸裂すると、そこからまるでビルのような大剣が姿を見せた。
「――みんな避けろっ!」
俺が反射的にそう叫ぶとともに、ビルのような大剣が俺たちに向かって振り下ろされる。俺たちは何とかその一撃を避けることには成功したものの、トンキーにその攻撃を避けることは出来ず、大剣の一撃をもろに喰らってしまう。
「トンキー!」
リーファの悲痛な叫び声が響き渡り、トンキーのHPはその一撃によって大きく削られながら、その行動を停止してしまう。今の大剣による一撃が、それほどのクリティカルヒットだった、ということか。
そして水柱が収まるとともに、大剣の主がその全貌を見せていく。それは、先程トンキーを襲ったが返り討ちにされ、ポリゴン片となって湖の底に落ちていった、三面邪神だった。だがそのままという訳ではなく、全身に亀裂が走ってHPは大きく削れていて、それに何より……水上に何のトリックもなく直立していたことだった。
「湖底に落ちたからって、水上を歩けるようになってリベンジか……!?」
どのようにして三面邪神が復活したかは定かではないものの、今こうして俺たちの前に立っている以上、そのようなことを考えても仕方がない。誰もがトンキーを守らんと自らの武器を取り、三面邪神を睨みつけたが、そこにユイの鋭い声が火急の事態を告げた。
「皆さん! 東から大人数のプレイヤーが接近中です! ……恐らくは、邪神狩りのパーティーだと思われます!」
邪神狩り。プレイヤーを軽々と一撃で倒す邪神を狩ることが出来れば、その報奨が凄まじいことだというのは想像に難くない。俺たちのように事故でここに来たのではなく、邪神と戦う万全の準備をしたプレイヤーがここに到着したら、俺たちとトンキーの命はない。
前門の虎、後門の狼とでも言うべきか――そんな事態に陥った俺たちのことを、決して届くことはない太陽の代わりに、氷柱とそれに巻き付く根が見下ろしていた。
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