暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
31.研修前夜の訪問者
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男の腕に吸収された。
 そしてボロボロになっていた彼の右腕が傷一つなくなる。

「やはり、錬金術師……!」

 雪菜が静かに呟いた。
 彩斗と古城が小さく息を呑む。“魔族特区”の住人である以上、もちろん錬金術師の存在は知っている。万物の組成を操り、黄金を生み出す者。神の技を暴き、生命の謎を解き明かそうととする永遠の探究者。

「剣巫と第四真祖、それに獅子王機関から監視がつくほどの吸血鬼か。さすがに分が悪いな。叶瀬夏音の始末は諦めるのが正しい判断か」

 そう言って錬金術師は、彩斗たちに背を向ける。

「待て、てめェ! 赤白チェック──!」

「逃がすかよ──ッ!」

「駄目です、先輩たち──!」

 相手の素性がわからない以上、ここで男を見失うのは危険だ。
 夏音を狙うのは諦めたと言ってはいたがその言葉が真実とはわからない。ここで仕留めなければならないと彩斗と古城は錬金術師を追おうとした。

「うおっ!?」

「なんだ!?」

 そんな二人の目の前に、金属の塊が倒れてくる。
 金属の塊となった樹木だ。錬金術師が巨大な街路樹を、鋼鉄へと変えたのだ。無数の枝が棘になり、彩斗たちを襲う。
 魔力を纏わせて防ごうとするが、質量が違いすぎる。たとえ防げたとしても魔力と激突した金属化した樹木がこの場に散らばるのは危険だ。
 考えがまとまる前に金属の樹木は倒れてくる。

「彩斗君!」

 友妃が叫びながら彩斗に飛びつき、樹木を回避する。

「大丈夫、彩斗君!? 怪我はない?」

「あ、ああ。大丈夫だ」

 友妃は彩斗の上でホッと胸を撫で下ろす。
 咄嗟の判断だったとはいえ、あの状況で飛び込んできて巻き込まれたら彼女は無事ではすまない。
 彩斗はあそこで潰されたとしても吸血鬼の超回復があるから問題はないといえばない。

「なんだったんだ……あいつ……!」

 金属の樹木を回避した古城が起き上がる。
 どうやら錬金術師の姿は消えていた。
 彩斗は覆いかぶさっていた友妃のとともに立ち上がる。

「──今の錬金術師、叶瀬さんを狙っていたんですか?」

 構えていた槍を下ろして、雪菜が訊いた。
 ああ、と古城が苦い表情でうなずく。

「とりあえずそれはあとで調べてみるとして……ありがとう、姫柊、逢崎。さっきは助かった」

「当然のことをしただけです。わたしは先輩の監視役ですから」

「ボクも彩斗君の監視役だからね」

 二人は当然のように言う。
 カフェテラス周辺の風景は、ひどい有様になっていた。何本もの街路樹が薙ぎ倒され、数軒の建物は半壊している。

「そういえば、彩斗君!」

 思い出したように友妃が詰め寄ってくる。

「は、はい」


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