第1章 闇艦娘の提督
第05話
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その時であった、提督の全身から黒いモヤ、闇が噴き出した。
闇はずぞぞぞぉと響にまとわりつき、響を覆い尽くしてしまう。
「こ、ここは?」
突然、周囲が真っ暗になった響。
今の今まで提督に抱かれていたのに、その提督がいなくなってしまった。
それどころか周りには何もなく、ただただ真っ暗である。
目を開けているはずなのに、何も見えない。
足の下には床らしきものが無く、まるで宙に浮いているかのように身体が何にも触れていない。
響は闇の中を漂っている。
「何も無い……これが闇?」
周囲を見渡しながら途方に暮れる響。
五感が役に立たない世界に、響は成すすべがない。
『これは闇ではない。お前自身だ』
提督の声が頭の中で響く。
『正確には、ここは闇に塗りつぶされたお前だけの世界。そしてこれが闇の洗礼の正体だ』
「私だけ世界? この何も無い空間が?」
『そうだ、何も無い。この世界は闇によって完全なる無に返された。そしてこの世界はお前自身、お前だけの世界、お前そのものだ』
「これが私……これが私の世界……私って何も無いんだね……」
『響よ、お前はこの世界を知っている。記憶には残っていないだろうが』
「知っている? この世界を? この何も無い世界をですか?」
『この世に生を受けた直後、つまりは生まれたばかりの赤子のときに、お前はこの世界から始まったのだ。生きとし生けるもの、すべての命には世界が存在する。その者だけの世界。無から始まる世界。命ある者は何もない世界から始まり、自分だけの世界と共に存在し、この世界と共に消えていく』
「赤ちゃんのとき……そうかもしれないね……」
『闇の洗礼とは、お前が今までに育んできた世界を、闇によってまっさらな状態に戻す、無に返す儀式』
「無に……返す?」
『闇によって無に帰されたお前は、誕生したての赤子と同じだ。まっさらな世界からはじめることになる。そしてお前が、お前自身の手で、この世界に有を増やしていく。お前がこの世界を育んでいく。お前の手でこの世界を作り上げていく』
「世界を作る……そんなこと、私にできるのかな……」
『誰しもが自分で自分の世界を作り上げているのだ。この事実を受け入れようが拒否しようが、その運命からは絶対に逃れられない。世界と切り離されるとき、それは死ぬときだ』
「一心同体……だらか自分自身なんだね……」
『響よ、闇を受け入れよ。さすれば、お前は闇を使うことができるようになる』
「提督……それはご命令ですか?」
『……響、闇を受け入れるのか受け入れないのか、お前自身が決めるのだ』
「……すみません、提督。野暮なことを聞いてしまったようだね……なら野暮つい
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