第二章
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なったという話はその日は誰も知らなかった。だが次の日の朝狩りに出掛けようとするムナティウスに対してあの少女がまたやって来たのである。無論その少女はアルテミスである。
「また君なのかい」
「ええ」
彼女は元気のいい笑顔で応えた。
「実は今日貴方にいい話を持って来たのよ」
「僕にかい?」
「そうよ、実はね」
そして彼女は昨日アルテミスの神殿で起こったことを彼に話した。無論自分こそがそのアルテミスであることは完全に隠して。
「ローダンテはアルテミスの巫女じゃなくなったのよ」
「まさか」
「本当よ。嘘だと思うのなら彼女の家に行ってみなさい」
そして行くようにけしかける。
「もう家の扉には弓が置かれていないから」
狩猟の神でありその神聖な証として弓が置かれているのである。これはその家にアルテミスの巫女がいるということの証明であった。
「すぐにわかるわ。そして」
「僕の愛を伝えることができるんだね」
「そうよ。頑張りなさいね」
そしてまた言う。
「応援してるから」
「有り難う。それじゃあ行ってみるよ」
その顔が晴れやかになっていた。
「そして彼女を」
彼はそのままローダンテの家に向かった。アルテミスはそれを笑顔で見送っていた。恋の成就を信じて疑わなかったのであった。これも彼女が恋というものを知らないせいであった。
ムナティウスは森には行かずローダンテの家に向かう。そしてその家の前にまで辿り着いた。
見れば家の扉に弓はかけられていない。どうやらあの少女の言ったことは本当であったらしいと思った。
「これで」
ムナティウスは自分の胸が高鳴るのを感じていた。
「ローダンテは僕のものに」
見ればその扉からローダンテが出て来た。いつもと変わらぬ美しい姿で。
だがムナティウスはこの時喜びのあまり気付いていなかった。彼女の顔が暗く沈んだものであることに。彼女はアルテミスの巫女でなくなったことに深い悲しみを抱いていたのだ。
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