第一章
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ることもできない。言うこともできないし。それに」
「彼女がアルテミスの巫女だから」
「そうなんだ。アルテミスの巫女は男を近付けない。だから僕も彼女の側に寄ることができないんだ。こんなに好きなのに」
「近付きたいの?」
「勿論だよ」
彼は言った。
「そしてどうしたいの?」
「愛したい」
一言であった。だがアルテミスはそこに彼の本心を見た。
「愛したい、それだけなんだ」
「わかったわ」
神はそれを聞いて頷いた。
「純粋に彼女が好きなのね」
「うん」
その言葉に偽りはなかった。アルテミスは何よりも純粋な心を愛する神である。だからこそ嘘は見抜くことができるし許しはしなかった。潔癖症の気質を持っているのである。
「それじゃあ彼女に告白してみせなさい」
そしてこう勧めた。
「えっ、けど」
だがムナティウスはそれに対して戸惑いを見せた。
「僕が告白しても彼女は」
「そんなのわからないじゃない」
そう言って励ます。アルテミスはこの時ローダンテのことをあまり知らなかった。自分の巫女をしているのは知っているがその貞節はあくまで普通の強さだと思っていたのだ。だがこの時はまだそれを知らなかった。アルテミスでさえも。
「何度も言えば大丈夫よ」
「そうかな」
「人に必要なのは誠意だから」
純粋な彼女ならではの言葉であった。
「誠意があればきっと実るわ」
彼女がアフロディーテの様に愛を知っていれば違うことを言ったであろう。だが彼女は狩猟の神であり愛の神ではなかった。愛のことは専門外であるだけでなく神々の中でも最もそれに疎い神であった。これもまた災いした。彼女は愛とは誠意であると思っていたのだ。決してそうではないというのに。
「貴方の誠意は私が保障するわ」
「本当に?」
「ええ」
神であることを隠してこう答えてにこりと笑った。本当に愛とは誠意であると疑っていなかった。
「だから。告白しなさい」
また勧めた。
「そうしたら実るわ」
「けれど彼女は」
彼はまた引っ込み思案に入った。
「アルテミス様の」
「それも大丈夫よ」
「何でそう言えるんだい?」
「私にはわかるのよ」
彼女でなければわからないことであった。他ならぬアルテミスなのであるから。だがムナティウスはそれを知らない。だから戸惑っていたのである。
「わかるの?」
「そうよ。だから心配しないで」
ムナティウスを励ます。
「アルテミスの加護を信じてね」
「うん。それじゃあ信じてみる」
彼も猟師である。アルテミスを信仰している。だからこそこう応えたのだ。
「そして。彼女に告白してみるよ」
ようやく決意した。アルテミスはそれを見て優しく微笑んだ。日に焼けて少し間違えると少年にも見えるその顔が完全に女性のものとなってい
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