その力は手の中に
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灰色の前髪の間から覗く桃色の瞳。
口元にはふわりと柔らかな笑みが浮かび、こちらを見ている。
「これが神殺し……」
“金牛宮”キャトルが呟く。
“双子宮”ジェメリィはゴクリと唾を呑み込んだ。
アランは自分の手に目を向け、笑みを崩す事なくゆっくりと口を開く。
「……懐かしいな、この感じ。力が満ち足りてる」
全身を巡る、目に見えない力。
今まで足りなかった何かが一瞬で埋まっていく。
空っぽのグラスが水で満たされるような感覚にアランは目を細めると、両拳を握りしめた。
拳に黒い光が纏われる。
「さて……ここからが本番です。まだ倒れはしませんよ」
塔の1番広いフロア。
12の塔の入り口を備える中央の塔に戻ってきたヴィーテルシアは、ぐるりと辺りを見回した。
あるのは12の入り口と、塔に入る為の入り口。扉は閉じられているが、外で戦っているのだろう。様々な音が聞こえる。
「ヴィーテルシア!」
「エルザか」
名を呼ばれ振り返ると、普段着の鎧を纏うエルザがいた。
右肩からは血を流し、多少の傷を負っている。
まあ私よりはマシか、と思いながらヴィーテルシアは尋ねた。
「とりあえず本宅に行きたいんだが……出口はどこにあるのだろうな」
「その扉は開かないのか?」
エルザが指さすのは、この塔に乗り込んだ時に使った扉。
それに目を向けたヴィーテルシアは残念そうに肩を竦める。
「生憎、開かないようだ。先ほど触れたら、この塔の中にいる“十二宮”とやら全員が倒れるまで開かないと術式があった」
「なるほど…他の出口は?」
「私がいた塔には無かった。他も同じ造りだとしたら無いと思う」
乱れた金髪を三つ編みに結え直しながら呟く。
そうか、と答えたエルザも周囲を見回し、扉がない事を確認する。
壁を壊すしかないかな、とヴィーテルシアが思い始めた時―――――扉が、開いた。
「!」
「お前……」
息を切らし入ってきた人物は、1歩前に進む。
それと同時に自動的に扉が閉まった。
ワインレッドのドレスの裾が揺れる。
背中まで伸ばした銀髪の女性は、真っ直ぐな瞳を2人に向けた。
「お願い、教えて。アルカはどこにいるの?」
―――貴女のせいでこの2人は死んだのよ―――
突然聞こえた声に、ティアは目を見開いた。
辺りを見回すが、誰もいない。
夢なんじゃ、と思って頬を引っ張る。痛い。
―――この2人がここに来たのは、貴女を殺しに来たからだった―――
―――貴女さえ生まれて来なければ、この2人はここに来なかった―――
―――巡り巡って全て貴女が原因なのよ、ティア―――
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