その力は手の中に
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取り戻すなんてね」
「僕も驚いているんですよ。取り戻せないと思っていたモノが、もう1度僕の手の中にある」
自分の手を見つめて微笑むアラン。
その笑みは力を得た事に対してでもあり、やっと誰かの役に立てるという事に対する嬉しさのようなものでもあった。
ぐっと拳を握りしめ、笑う。
「初めてこの魔法を好きになれそうなんです。やっと、正しい使い方を見出せた気がする」
忌々しい過去の塊のような“それ”。
滅神魔法に僅かな可能性を見出した者達の自分勝手な行動がどれだけ辛かったかを思い出してしまうから、ずっと使えなかった魔法。
正しい使い方を教えてくれる人はいなかった。周りの人は皆、この力を己の為だけに使おうとする。これがアランの力である事から目を背け、アラン本人さえも利用しようとしていた。
それが、まだ幼かったアランにとっては何よりの苦痛である事を知っていたはずなのに。
「周りが皆、僕の力を自分の為だけに使おうとするのなら、僕にだって自分の為だけに使う権利があるはずですよね」
この力はアランのモノだ。
広い世界を漁れば同じ魔法を使う者はきっといるだろうが、だとしてもアランの力である事に変わりはない。
「だったら、僕は僕の周りの人達の為に魔法を使います。僕を僕だと認めてくれる人達の為に」
―――――人間という生き物は、どうしてこんなにワガママなんだろう。
自分の部屋に閉じこもっていた3年、アランがずっと考えていたのがそれだった。
膝を抱え顔を埋め、時に布団の中で丸くなって、答えを見出そうとしていた。
その度に自分も人間である事を思い出し僅かに笑みを浮かべながら、それでも考える事を止めない。
(……誰も信じられない)
周りの人間の考え全てが自分を利用する事に繋がっている気がする。
でも、それは仕方のない事でもあった。
彼の周りにいた人間の種類は2つ。
1つは、アランを利用しようとする者。
1つは、そんな彼を憐みの目で見る者。
周りにいたのは、そんな人達だけだった。両親でさえも、息子の境遇に対して同情している。
(同情なんていらないのに。僕が欲しいのは……普通の生活だけなのに)
同情されると、まるで自分が可哀想な人になったような気になる。
アランはこの状況をどうにかしたいとは思っている。昔のようになれたら、とも思う。
ただ明るく、苦しみなんて知らない無邪気で無垢な子供でいられたらどれだけ幸せか。
だけど、アランは自分が可哀想だとは思っていない。
周りに利用され続けていたのは確かに辛かったし、一般的に見ればそれは“可哀想”なのだろう。
ただ1つ気に入らないのは、彼を可哀想だと言う人は揃いも揃ってアランの事を何も知らない人達だという事
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