志乃「じゃ、やるか」
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前、言葉足らずなんだよ。そう言ってくれればすぐ分かったっての」
苦笑しながら呟く俺に、志乃は不満そうな顔をしながら言った。
「私の言葉の意味を完全攻略してないなんて、兄貴失格ね」
「お前わざと変な言葉作って俺をバカにするだろ?」
それから、俺達はついに動画作りの作業を始めた。長かった。最初にこの話が持ち上がったのはいつだっけか。うわ、ホントに思い出せない。まぁ、それ程までに俺の新しい高校生活は他の奴以上に色濃いって事だ。
俺の部屋に置いてある機材を持ってきて、説明書を見ながらセットしていく。とは言っても、別に難しい事じゃない。オーディオインターフェイスという音質向上機器をUSBでパソコンとマイクに装着するだけだ。後はDAWソフトとエフェクトウェアソフトという音楽編集のためのソフトをパソコン内に読み込んでいつでも使えるようにするぐらい。俺が想像していたのは徹夜漬けだったんだけど、あまりに簡単に済んでしまって少し心配にもなった。
「ああ、でも俺まだ曲完璧じゃないんだよな」
「私ももう少し練習したい」
機材のセットが完了した際、俺がそう言うと、志乃もそれに同意した。珍しく意見が一致したようだ。という事で、俺達はもう少し練習してから本番に臨む事にした。
その本番は、カラオケ店の中でやる事に決まっている。志乃のピアノを先に録音し、軽く編集を加えて完成させる。最後に、俺の声を動画に吹き込むわけだが――家でやるのは近所迷惑なので、近くのスタジオが無いか探したのだが、あいにくそんな運の良い展開は訪れなかった。
結果、防音のカラオケ店ならいけるんじゃ?という俺の提案に、志乃も賛成し、そこで歌う事になった。そのためにはパソコンなどの重たい機材を持っていかないといけないが。
俺は志乃と今後についていいろいろ話した上で、パソコンと機材のドッキングを切り離した。今はやらないのだから、あっても邪魔になるだけだ。
「じゃあ、来週の土曜に録音な」
「分かってる」
そう言って志乃の部屋を出る。機材はここに置いて良いと言われたのだが、俺の部屋の方が荷物が少ないので再び自室に持ち込んだ。
そして、時間を見る。午前一〇時半。ざっと一時間ぐらいしか経っていない。
だが、その間に俺が身を持って経験した最高峰の感動は、余韻となって俺の耳の中に残り続けた。
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