志乃「じゃ、やるか」
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だった。
「兄貴、ちょっと来て」
土曜日の午前九時半頃。まだ休日が始まったばかりの時間帯。俺は八時頃に起きて、ずっと部屋で携帯ゲームに興じていた。今日もマイクを探しに出かけるつもりだった。志乃を誘ってみると、「私は別口から」と言われてしまったが。
そんな時、志乃から呼び出しがあったのだ。街の店が開いてくる一〇時に合わせ、そろそろ支度をしようかと思ってタンスの中の服を漁っていた時だった。
「お前ノックぐらいしろよ」
「兄貴の部屋は、私の部屋」
お前はどこのガキ大将だよ。むしろ言葉と行動で人を追い詰める恐ろしい悪人だろ。
「で、何しに来た?もしかして俺と一緒に行きたいとか?」
「それはない」
即答しないでほしい。冗談で言ったつもりなのに、けっこう傷つくぞ。
では一体何のようなのかと改めて問うと、志乃は少し俺と目を逸らして、小さな声で呟いた。
「……ク」
しかしその声はいつも以上に小音すぎてホントに聞き取れなかった。
「もっとデカい声で言ってくんね?ちょいと聞こえねえわ」
「……マイク」
「マイク、がどうした?それなら俺とお前で互いに探しあう話だろ。それとも、俺と行きたいけど恥ずかしくて言えないとか?」
「それはない」
いやいや、即答はダメだって。ああでも、俺が無駄な事言わなきゃいいのか。これ完全な自滅行為じゃん。
そこで俺と志乃の間に奇妙な沈黙が訪れる。俺は志乃の次の言葉を待ち、志乃は何か言いづらい事があるのか、その場で突っ立っているだけだ。言葉の応対は出来る状態だが、言葉を発する主に問題がある。そんな感じだった。
これ以上は無意味だと思い、俺の方から急かすように声を掛ける。
「まぁ、何か言いたい事あるなら後で聞くよ。俺これからマイク探しに行くから」
「ちょっと待って」
どんだけもったいぶるんだ?まぁ、マイク探しは何時からでも出来るから構わないけどさ。志乃は続けて俺に言ってくる。
「時間は取らない。でも、この先に進める」
「……よく言ってる意味が分からないけど、まぁいいや。お前の部屋に行けばいいんだっけ?でも、お前俺が部屋に入るの嫌がってなかったか?」
ふと思い出して聞いてみると、志乃は俺の予想とは違う顔をした。何故かきょとんとした顔でこちらを見ている。
「私、兄貴にそんな事言ったつもり無いけど」
「いや、だって」
今まで俺が入るのめっちゃ拒んでたじゃん。いきなりそんな顔されても、困るのはこっちなんだけど。
「普通に部屋が散らかってたから入れなかっただけ。後は、準備のためかな」
「準備?」
「来れば分かる」
そ
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