最終話 芝生の上でその四
[8]前話 [2]次話
「それでもね」
「嫌われないチームだよな」
「勝っても負けても華があるから」
阪神はだ。
「それでなのよね」
「そうそう、阪神はさ」
「勝ったら確かに嬉しくて」
「それも絵になってな」
「負けたら悔しいけれど」
「それでもなんだよ」
やはり絵になるのだ、阪神は。
「どんな勝ち方でも負け方でもさ」
「しっかりと絵になるのよね」
「華があってな」
「お家騒動があってもね」
「普通お家騒動って見苦しいからさ」
どのチームにもあるが阪神は伝統的に多い、最近は違う様だが。
「ファン離れるけれど」
「阪神はね」
「中々離れないんだよな、ファン」
「お家騒動があっても」
「だからあたし達もさ」
軽音楽部でも、というのだ。
「好きなんだよな」
「皆ね」
「来年はどうかわからないにしても」
「来年も打線がよかったら」
「それならな」
「優勝出来るわね」
「まあな。けれどな」
ここでだ、美優は心配そうな顔で言った。
「野球って一年だからさ」
「来年はわからないっていうのね」
「去年優勝したのと同じ戦力でもさ」
寸分違わずでもだ。
「優勝しないとかな」
「あるからっていうのね」
「阪神だって他のチームだってそうだろ」
「その年に日本一になっても」
「次のシーズンはな」
例えだ、全く同じ戦力でもだというのだ。
「優勝出来ないとかあるだろ」
「そういえばそうね」
「完全無欠の戦力でもさ」
そうみなされる戦力でもというのだ。
「負けるだろ」
「確かに」
「そりゃさ、阪神のピッチャーは伝統的にいいぜ」
このことは安心出来た、確かにそうでない時期もあったがだ。
「それで打線さえよかったら」
「鬼に金棒よね」
「その金棒を持った鬼でもさ」
「一年だけっていうのね」
「日本一になったチームが翌年最下位だったってこともあるしさ」
昭和三十六年の大洋ホエールズ今の横浜ベイスターズだ。このチームは昭和三十五年に三原マジックで日本一になったが翌年のその年には最下位になっている。
「そういうこともあるから」
「阪神もなの」
「正直わからないぜ」
「今年も優勝出来るかどうか」
「ああ、そうだよ」
こう心配している顔で言うのだった。
「そりゃ日本一になって欲しいけれどさ、来年も」
「けれどどうなるのかはわからないから」
「何でも絶対ってないだろ」
この世にあるものはというのだ。
「野球だってな、特に阪神は」
「確かに。阪神の歴史って」
「絶対ってないだろ」
間違ってもというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除