第四章
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第四章
「このトロイアに」
「何、姫様案じなさいますな」
「そうです」
しかし彼女の周りにいるトロイアの兵士達は強気だった。
「このトロイアは難攻不落」
「神々とても陥落させられることはできません」
実際にアポロンやアルテミス、アーレスといった神々の加護を受けての城壁である。トロイアにはオリンポスの神々の多くが力を授けてもいるのだ。
「ですから。あの大軍といえど」
「我等には適いません」
「貴方達はそう思っているのですね」
だがカサンドラは彼等の自信に満ちた言葉を信じてはいなかった。
「私は。それは」
「何故そこまで悲しんでおられるかわかりませんが」
「御安心下さい」
彼等はあくまで強気である。カサンドラの予言を信じてはいないからこそ。
「我等もいます」
「そしてヘクトール様も」
「ヘクトール兄様・・・・・・」
長兄の名を聞いたその時だった。またしてもカサンドラの脳裏に宿った。誰も信じず、そのうえ決して外れることがないあの忌々しい予言が。それは。
「兄様はこの戦いで」
「!?この戦いで」
「ヘクトール様がどうされるのですか?」
「倒されます」
彼女はその予言を告げた。
「ギリシアの英雄アキレウスによって」
「アキレウス!?あの」
「不死身と言われる」
「そうです。ですから兄様はアキレウスと戦ってはなりません」
こう告げるのである。
「決して」
「何、大丈夫ですよ」
「ヘクトール様です」
彼等は言うのだった。
「あのヘクトール様が倒される筈がありません」
「英雄ヘラクレスやテーセウスとの力比べにも互角だった方です」
実際に彼等がトロイアにやって来た時にそれを行い互角だったのである。
「ですから。アキレウスといえど」
「敗れる筈が」
「やはり。今の予言も」
誰も信じることがなかったのだった。
「私の予言を信じる者は。やはり」
「とにかくです」
「カサンドラ様」
彼等はそんなカサンドラの嘆きなぞ知る由もなく落ち着き払った声で彼に言うのであった。
「御安心下さい」
「そうです」
「何を安心せよというのですか?」
憂いに満ちた顔を彼等に向ける。しかしそれでも彼等には届かないのだった。
「私に。何を」
「ヘクトール様がおられますし」
「我等もいます」
だからだというのである。
「それにアキレウスは来ておりません」
「アキレウスは」
「そうです。どうやらギリシアでも色々と事情があるようで」
「それで」
これは事実だった。アキレウスはこの時ギリシア陣営のある者と衝突しトロイア遠征には加わっていなかったのだ。トロイアの者達もそれを知っているのだ。
「アガメムノン王もいてオデュッセウスもいますが」
「それでもアキレウスがいない
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