彼女が手繰る糸
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これまで話し合ってきた結果を以って、桂花はそう、問いかけた。
「ふふっ……」
小さく、彼女は笑う。
妖艶な大人の女の声にも、幼子特有の甘い声にも聞こえるそれが耳を打ち、桂花の背筋に寒気が走る。
――なんて声で笑うのよ、あなたは。
胸が締め付けられた。恐怖に肌が粟立った。ひやりと、桂花の心臓に手を這わされた冷たい感覚がして、歯を噛みしめて耐えた。
「はい、でも……あの人ならもっと綺麗に、そして残酷に捻じ曲げるなぁって……思い出しました」
「……黒麒麟が?」
這いずる恐怖に耐えかねて震えはじめた自身の声に、桂花自らが驚いた。
雛里はその名を聞いて……はぁ、と愛しげに吐息を一つ。
「そうです。私達が積み上げた策は……もっと、もっと高められます。たった一つ、手を打つ事によって」
正しく、ぞっとした。
自分達の考えた此処からさらに昇華させられる方法があると聞いて……では無く、それが一つの追加によるモノからという事実に。
雛里ほど才のある者が、一つ、と言ったのだ。
策とは……本来は真っ直ぐなカタチで通したいモノが出来ないからこそ、幾重にも糸を張り巡らさせて、結果に辿り着く為に研鑽して積み上げるモノ。
その幾重にも張り巡らせた糸が、たった一つ加えるだけで全てを変えられると言うのだ。
確かに一つの糸を引けば、他の糸が繋がって引き上げられてくるは必至ではあるのだが、通常であればどれかに綻びを持たせてしまうか、切り捨ててしまうはず。
だから雛里が言っているのは、綻びを出さずに昇華させる方法があるという事。
それがただ、恐ろしいと感じた。
「……きっと彼が戻るかどうかギリギリの線になるでしょう。一度だけ彼には……黒麒麟に戻って貰います」
疑問が頭に浮かぶ。
今の秋斗が策に関係して来るなど、桂花の予測の範囲を超えていた。
さらには戻したくないはずなのにそれをする雛里の心も分からなかった。
しかし、雛里の声は確信を含んでいる。それをすれば全てが上手くいくのだと。
「今の私は覇王の為の鳳凰です。彼を戻したくない、とは言っても、華琳様の理想の一助となるならば彼を賭ける事も躊躇いません」
心の内の疑問を見抜かれ、桂花はまた戦慄に凍る。
これが鳳凰なのだ。
主が描く世界の為に、自分の大切なモノをも切り捨てる……では無い。華琳がより最高のカタチで乱世を越えて行けるようにと、そして彼が戻るという事態は起こらないとも、計算し尽くした上で全てを操る。
何を以ってして戻らないと確信しているのかは分からずとも、華琳の為と言われては、桂花もこれ以上の沈黙を許す訳にはいかなかった。
「詳細を……教えて」
軍師として冷たく、桂花は声を零した。雛里
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