第六話
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ったはずだが――
「ここ、あたしたちも前に来たよ?ここがどうかした?」
なぜ俺の言うべきことを先に言いやがる。
瞬間にその一文を表示した脳に、ある種の失望とやるせなさを覚えた俺は、再び軽度の鬱状態へと移行しかける。が、ありがたいことに直後響いた青剣士の一声に、危ういところで俺は我に返った。
「ここがさっき言った、トラップボタンのところだよ。ほらよく見るとあそこに……」
そう言って青剣士が指さす方に目を凝らすと、前方十メートルほどまで迫った星空模様の壁に、それと同色だが小さな突起物が確認できた。よく見つけられたなあと、そのあまりの小ささ見づらさに、思わず感嘆の声を上げそうになる。
「うへえー、ちっちゃい。こんなとこにこんなのがあったんだ。全然気づかなかったよ」
耳に入るシーラの高い声。反射的に左隣を見やるが、驚いたことに、つい先ほどまでそこに佇んでいたはずの、彼女の姿がきれいに消えていた。
疑問をわずかに掠め、遅れて声のした方向を理解した俺は、まさかそんなヘマはすまいと、半分祈りながらゆっくりと例のボタンへ視線を戻してみる。すると案の定、下方向に手前一メートルでそのボタンを興味津々と眺めまわす、シーラの後ろ姿があった。
哀愁も糞もないその背に感じた、前とはまた少し別の深まるやるせなさはとりあえず心の奥底にしまっておくことにして、あいつを一人にはできんという謎の使命感と、七割ほどの好奇心も相成り、俺は例のボタンとシーラのそばに近寄っていった。
「ああ!押さないでくれよ!?まだ何か出てくるかもしれないから!」
トラウマを叫ぶ青剣士に、「大丈夫ですよ」と、ついでに小声で「多分」を付け加え、細幅の通路で、共にシーラの背を目指し、歩く。
無駄な努力と知りながら、あたりの壁を見回し、慎重に眺めつつ、シーラとの距離を半分ほどまで詰めたころ、俺は不意に、何か違和感を感じた。
以前来た時の、圧迫されているような感覚が薄まっている気がする。空気も心なしか晴れているようだ。
その原因は、がんばればシーラの頭に一発かませるほどの距離までたどり着いた時、明らかになった。
「……なあ、シーラ。ここって続く道あったか?」
「続き?この先って行き止まりだったんじゃ――」
そこまで言って、ふと、困惑を浮かべたシーラの顔が、俺の眼が向く方向、袋小路になっているはずの右通路へと向けられた。おかげで彼女も俺の感じた違和感を察し、理解したようで、光景を捉えたその目が驚きと共に見開かれる。
突き当りの壁に、いつかにはなかった大穴が開いていたのだ。
「それだよ。オレが言った『ただの罠じゃない』ってのは」
左腰に携えた直剣に手をかけ、青剣士が俺のわきに進み出た。
「コボルトの湧出(ポッ
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