第六話
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俺のリアクションを待つシーラから視線を外すと、俺は、協力者青剣士殿に目だけで礼をし、続けて言った。
「同時に二つのことを考えるっていうのは、なかなかできるもんじゃないですからね。それこそ某聖徳太子さんでも呼んでこないと……」
「ええ!?無視なの!?放置なの!?」
騒ぐシーラには一ミリも興味を向けず、さらに話題を九十度曲げる。
「にしても大変でしたね、あの敵の数。突撃兵に剣士に……何気にコボルト全種類いたんじゃないですかね。アレ」
「ははは、かもね。オレはトルーパーが苦手だから、そいつが苦しかったことばっかり覚えてるよ」
青剣士が、その笑みをわずかに苦くし、面目ないと頭をポリポリ掻く。
戦闘時の記憶でも蘇ったのか、ぼうっとしながら、雄大な毛髪を所有しているくせにしばらく頭皮に刺激を与え続けていた彼だったが、ふと、その手が止まった。
不審に思う間もなく、だんだんと、にやついたその顔も神妙になり、考え込むようにうつむいていく。その角度がある一定まで達した時、はたとその顔に光が戻った。
勢いのまま、青剣士は興奮丸出しといった喜びの表情で、俺に迫った。
「そうだ!そうだよ!トルーパー!君たちにも教えなきゃいけないんだ!忘れてしまっていたなんて……駄目だな、オレ」
いきなりのハイテンションからいきなりのローテンションへと落ちていく青剣士を、おそらく困惑の表情で見届けた俺は、凍りついたその顔を戻すことも忘れ、自嘲じみた言葉の尾を引く彼に、尋ねた。
「どうしたんです?教えなきゃとか忘れてたとか……」
恐る恐るといった風に俺はそう訊く。すると青剣士は、はっと、沈んだ瞳に生気を取り戻し、しばらく悩むそぶりを見せた後、静かに語りだした。
「そうだね……順を追って説明しようか」
「まず、オレたちのこと。君たちもそうだと思うけど、オレのパーティーは、第一層のボス部屋を探していたんだ……言うのもなんだけど、結構な時間ね」
後ろを言葉にした時の青騎士のしみじみとした表情に、少なからず心が痛む。それほどの時間をかけて彼らが攻略してきたモノを、俺はシーラの知識を以て、日帰りの数時間で済ませようとしていたわけだ。
いくら第一層早期突破のためとはいえ、テスター権の横暴は、それはあまりに――まて、ここを攻略していた連中の中に、そのテスターは居なかったのか?……いや、居るはずだ。現状、彼ら彼女らは様々な面でトッププレイヤーなのだから。にもかかわらず、ボス部屋はいまだ発見されていない。それすなわち、ベータテストの知識は役に立たないということ。
……シーラを仕置く理由がまた一つ見つかった。
緩みそうになる頬を理性で支えると、感傷から帰還した青剣士が、再び口を
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