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カサンドラ
第二章
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「その方こそが。そしてそれによりトロイアは」
「滅ぶと」
「ギリシアで最も美しい方を奪われたギリシアは必ずやその軍を集めます」
 これはへレナの夫を選ぶ時に決められていたことなのだ。若しヘレナに何かあればギリシアは一致団結して彼女を救うと。そう決められていたのである。
「そしてトロイアに来て」
「馬鹿な」
 だがラオコーンは彼女のその予言に首を横に振った。
「そんなことは有り得ません」
「どうしてですか?」
「パリス様は聡明な御方です」
 まだ戻って来て間もないが既にその評価を手に入れていたのである。確かに彼は聡明で物事の受け答えだけでなく学識もあり音楽にも秀で人柄も円満だった。兄にヘクトールがいるので次の王でこそなかったがそれでも皆からその将来を期待されていたのだ。その彼がまさか、ラオコーンでなくとも思うことだった。

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