第十一章
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第十一章
「兄様は。命を賭けて貴方をお救い下されたのです」
「私をですか」
「そうです」
こう彼に告げるのだった。
「あの方は。その為に全てを賭けられたのです」
「ヘクトール様は」
「一度は貴方に助けられ今度は貴方を助けられた」
また彼に告げた。
「ですから」
「そうですか・・・・・・」
「ヘクトール兄様はトロイアの為に全てを捧げられました」
兄を純粋に褒め称える言葉であった。
「そして私の為に貴方を」
「私を」
「ここに導いて下されました。私の為に」
「カサンドラ様・・・・・・」
「アイアネアース殿」
イオラトステスに語り終えた後アイアネアースに顔を向け声をかけるのだった。
「これからはどうされるのですか?」
「まずは生き残ったトロイアの者達を集めます」
彼はこうカサンドラに答えた。
「そして」
「そして?」
「新たな国を築こうと思っています」
「新たな国をですか」
「トロイアは滅びました」
これはもう否定しようがなかった。トロイアは今も燃えている。それこそがトロイア滅亡の何よりの証であった。
「ですが。我々は生きています」
「はい」
アイアネアースのその言葉に頷いた。
「ですから。今から何処かに」
「トロイアは」
そしてここでまた。カサンドラに予言が降りた。
「トロイアは」
「カサンドラ様、まさか」
「はい」
イオラトステスの言葉に対して答える。
「予言が。予言が降りました」
「今度は一体どういった予言ですか?」
「西に行きましょう」
こう告げるのだった。
「西に。そして海を渡り」
「海を」
「シチリアを北に上りそこから陸にあがり街を築きましょう。その新たな土地で」
「シチリアを右にですね」
「そうです。そこです」
イオラトステスに対してだけだったがそれは自然とトロイアの者達にも届くのだった。彼の口を通して。
「トロイアはそこで蘇ります。あらたな街として」
「アイアネアース様」
イオラトステスは実際にアイアネアースに対して告げる。
「行きましょう、西に」
「西か」
「そして海を渡り新たな地へ。我等の新たな地へ」
「そうだな。最早トロイアはない」
まだ燃え盛っている。そこから逃げ延びてくる者達はまだいる。しかし街は潰えたのは疑いようがなかった。燃え盛る炎がそれを教え続けている。
「それでは。やはり」
「はい。ここを去り」
彼はさらにアイアネアースに話す。
「行きましょう、新たな地へ」
「うむ。そこで再び栄華を取り戻そう」
彼は決めた。新たな地へ向かうことを。イオラトステスは彼のその決意を見届けてからまたカサンドラに顔を向けて言うのであった。
「では我々も」
「その新たな地へ行くのですね」
「
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