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戦国異伝
第百七十四話 背水の陣その九
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「何と、丸太か!」
「鉄砲と弓矢だけではないのか!」
「これも出してきたか!」
 これに上杉軍の兵達は驚いた、そして。  
 次の瞬間にだ、自分達の主のことを思った。
「殿!」
「殿はご無事か!」
「丸太に打たれてはいないか!」
「大丈夫か!」
「いや、見よ!」
 兵の一人がここで叫んだ。
「宙を!」
「おお、殿!」
「殿はそこか!」
 何とだ、謙信は丸太が来るより先にだった。
 己の馬を高々と跳ばしていた、まるで馬に翼があるかの様に。
 そのうえでだ、馬上から高々と剣を掲げてだった、織田軍の中に降り立ち。
 その剣で縦横に斬りだした、敵の総大将自ら真っ先に敵陣の中に飛び込んでみせたのである。そうしてさらにだった。
 戦いながらだ、謙信は己の将兵達に言った。
「皆の者、わたくしに続くのです!」
「はっ、今より!」
「それでは!」
 上杉の者達は主の言葉に応えてだ、そしてだった。
 織田家の軍勢に再び突っ込む、丸太をものともせず。
 織田軍はその彼等に長槍を突き出しそれから弓矢も放つ。そうして懸命に敵を防ぎつつ何とか戦っていた。
 だが謙信は既に陣中に入っている、本来なら敵の総大将を討ち取れる絶好の機会だ。だが相手があまりにも悪かった。
 謙信は馬で跳び駆け織田の陣中を無人の野を賭けるが如く荒れ狂う。その武は兵達では相手にならなかった。
 その謙信を見てだ、佐久間は柴田に唸る様にして言った。
「聞いてはおったがな」
「うむ、それでもじゃな」
 柴田もだ、謙信の戦いぶりを見て言う。
「違うわ」
「まさに軍神じゃな」
「強い、強過ぎるわ」
「慶次は直江兼続に向かっておる」
 織田家随一の武辺者は、というのだ。
「今回あ奴は向けられぬ」
「しかしじゃな」
「まだ人がおる」
 織田家には、というのだ。
「才蔵、それにな」
「又兵衛じゃな」
「そうじゃ」
 後藤も送るというのだ。
「ここはな」
「あの二人なら何とかなるな」
「二人共慶次に劣らぬ武辺者じゃ」 
 だからこそ、というのだ。
「あの二人に謙信を止めてもらおうぞ」
「ではな」
「二人には既にわしから話しておる」
 佐久間はそうしたというのだ。
「ではよいな」
「二人を謙信公の前に向かわせてくれ」
「わかった、さすればな」
 こう話してだ、そしてだった。
 二人が早速謙信のところに向かう、そのうえで。
 彼等が必死に戦い謙信を止めた、だが二人がかりでもだった。
 謙信は強い、後藤は謙信の剣を止めつつも眉を顰めさせ可児に言った。
「いや、流石ですな」
「全くでござるな」
 可児もだ、何とか攻めようとするが。
 謙信の剣?の速さの前にだ、ことごとく防がれ言うのだった。
「この強さ、まさに軍神」
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