第百七十四話 背水の陣その八
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柴田は雷の様な声で全軍に告げた、
「退く道はない!前に出て守れ!」
「わかりました!」
「では!」
「鉄砲を撃て!」
まずはこれだった。
「それから弓じゃ!長槍も忘れるな!」
「その三つですか」
「三つで守れというのですか」
「よいか、隙を作るな」
武田との戦と同じだった、この備えは。武田との戦ではかなりの損害も出たがやはりこれしかなかった。そして今は。
「そのうえでじゃ」
「あれですな」
「あれを使うのですな」
羽柴と明智が柴田に問うてきた、自分達の方に突き進んでくる謙信を見ながら。
「長槍の前に、ですな」
「あれを」
「そうじゃ、謙信公に通じるとは思えぬが」
相手が相手だ、だからだ。
しかしだ、それでもだというのだ。
「それでもな」
「ここは、ですな」
「あれですな」
「そうじゃ、あれじゃ」
まさに今使うと言ってだ、そしてだった。
まずは鉄砲だ、これを放ち。
続いて弓を放つ、しかしそのどれもだった。
謙信には当たらない、鉄砲の一発も弓矢の一矢も。前田は謙信に擦り傷もかからないのに驚いて言った。
「何じゃ!?謙信公には当たらんぞ」
「うむ、一発もじゃな」
「どういうことじゃ」
佐々に金森もそれを見て驚きを隠せなかった、謙信にはとりわけ鉄砲と弓矢を向けているがただの一撃もだったのだ。
当たらない、これには誰もが驚いた。
「これこそ軍神か」
「越後の龍の力か」
「それなのか」
「鉄砲を次に撃つ時はないぞ」
「弓矢の間合いにも近い」
「後はあれだけじゃ」
三人も焦りだした、だが。
その三人にだ、佐久間が大声で言った。
「案ずるな!将帥が焦ってどうする!」
「!?牛助殿」
「それでは」
「謙信公だけではないぞ!」
軍を率いる彼だけではないというのだ。
「敵は五万いる、その五万を防ぐのじゃ」
「そ、そうでしたな」
「ここは」
「謙信公には武辺者を何人か向ける」
己の武勇を誇る者達を、というのだ。
「よいな」
「では我等はですな」
「敵の軍勢を」
「防げ、上杉の軍勢は強いぞ」
彼等の強さもよく知られている。
「ではよいな」
「はい、では」
「ここは」
前田達は佐久間の言葉に頷いた、そしてだった。
今度は切り札と長槍を田さんとしていた、そして上杉の軍勢が迫ったそこにだ。
上杉軍の騎馬隊が来た、その凄まじい突進を見てだった。柴田は全軍に対して強い声でこう命じたのだった。
「今じゃ!」
「はい!」
「それでは!」
「突き出せ!」
柴田のこの言葉と共にだった、織田軍から。
一斉に太く巨大なものが突き出された、それは。
丸太だった、その丸太がだった。
今まさに迫らんとしていた上杉軍の騎馬隊を
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