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クピドの贈り物
2部分:第二章
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「そうよ」
「そんな、僕はプシュケーとずっと一緒にいたい」
 その気持ちは本当だ。変わることがない。
ずっと。それなのに」
「残念だけれどそれはできないの」
 アフロディーテーは悲しい顔で首を横に振った。
「交わって子供を作ることはできても」
「そんな・・・・・・」
「永遠に一緒にいることはできないの。それが人間としての運命なの」
「人間のですか」
 アフロディーテーは今まで多くの人間と交わってきた。それにより子ももうけている。しかしそれでも人間の命は限りがあることを知っていたのだ。それを知るまでに多くの悲しみも経ている。わかっているからこそのクピドへの言葉だったのだ。
「だから。覚悟はしてね」
「僕はプシュケーと永遠にいられない」
 クピドはその言葉を呟く。呟くがどうにもならない。
「けれどどうしたら」
「それでも愛することはできるわ」
 アフロディーテーは述べてきた。
「それもわかって」
「愛することは」
 このことも教えられた。しかし受け入れるのには多くの葛藤があった。暫くの間どうにもやりきれない気持ちで沈んでいた。何をすればいいのかわからなかった。
 プシュケーと一緒にいる時もそれは同じだった。沈んで一緒にいても俯いてばかりだった。プシュケーが話し掛けてもそれは変わることがなかった。
「どうしたの?」
「うん」
 ぼんやりとした様子でプシュケーに応える。
「ちょっとね」
「ちょっと?」
「いや、あのね」
 その暗い気持ちでプシュケーに顔を向ける。
「僕とずっと一緒にいたいよね」
「ええ」
 プシュケーは何も疑うことなく彼の言葉に答えた。
「そうだけれど」
「うん、僕もそれは同じ」
 クピドは俯いたままプシュケーに言葉に返した。
「けれど」
「私が死ぬまでね」
 だがプシュケーはここでこう言ってきた。
「どちらかがいなくなってもね。その時まで一緒にいたいの」
「一緒に!?」
「そうなの。そしてそれからも心の中でね。一緒に」
 プシュケーの考えはこうであった。生きている限り一緒でそれからもお互いの心の中で一緒にいたいと。そう考えているのだと。それが今クピドにもわかった。
「何時までもね」
「何時までも」
 その言葉を聞いて顔を少し上げた。
「そう、心は何時までも一緒よ」
 また言うのだった。その時ふと太陽の光が目に入った。
 太陽はアポロンのものだ。だが全てを輝かすものである。今彼はそれが目に入ったのであった。まるでそれが運命であるかのように。
「いいわよね、それで」
「う、うん」
 少し戸惑いながら答える。悪息はしなかった。
「それでね」
「よかった。それじゃあ約束して」
 プシュケーはにこりと笑って彼に声をかけてきた。
「いいわよね」
「うん
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