禁断の果実編
第90話 Complex
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が)、思案にふける。
(よかった。これで何とかバレずにすんだ。いくらか演出過剰だった気もするけど、レデュエ相手ならあのくらいはしないと。碧沙にはバレてそうだけど、兄さんは。きっと傷ついたろうな。僕は優等生でイイコの弟だって信じきってただろうから)
――“信じていた者に裏切られる驚きの顔。本当に滑稽でね”――
昼間のレデュエの言葉が不意に蘇った。
光実は髪を振り乱す勢いで頭を振った。
(ちがう。滑稽なんかじゃ、面白くなんかなかった。確かに僕を押さえつけてた兄さんだったけど、あれで気持ち良かったなんて、そんなの)
――“もっと痛快なのは、オモチャが壊れる瞬間だ”――
(確かに兄さんを鬱陶しいと思った時だってあったけど、壊れろなんて、死んじゃえなんて、そんなこと考えてなんかない!)
いつかの出会いを思い返す。――ジロー。機械でも人間の心を持っていた彼。彼は自分の良心が不完全だからこそ、善き者で在ろうとしていた。
機械でさえそんなふうに生きられるのだ。生身の人間の自分が誘惑に屈してどうする。
(負けるな。僕は僕の戦いをするために、“こっち側”にいるんだから。全部達成するまで、自分に負けるな。呉島光実)
光実は自分で自分を抱き締めた。この腕が兄か妹のものであればいいのに、という甘えに、蓋をして。
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