暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代U
禁断の果実編
第90話 Complex
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
が)、思案にふける。

(よかった。これで何とかバレずにすんだ。いくらか演出過剰だった気もするけど、レデュエ相手ならあのくらいはしないと。碧沙にはバレてそうだけど、兄さんは。きっと傷ついたろうな。僕は優等生でイイコの弟だって信じきってただろうから)


 ――“信じていた者に裏切られる驚きの顔。本当に滑稽でね”――


 昼間のレデュエの言葉が不意に蘇った。
 光実は髪を振り乱す勢いで頭を振った。

(ちがう。滑稽なんかじゃ、面白くなんかなかった。確かに僕を押さえつけてた兄さんだったけど、あれで気持ち良かったなんて、そんなの)


 ――“もっと痛快なのは、オモチャが壊れる瞬間だ”――


(確かに兄さんを鬱陶しいと思った時だってあったけど、壊れろなんて、死んじゃえなんて、そんなこと考えてなんかない!)

 いつかの出会いを思い返す。――ジロー。機械でも人間の心を持っていた彼。彼は自分の良心が不完全だからこそ、善き者で在ろうとしていた。
 機械でさえそんなふうに生きられるのだ。生身の人間の自分が誘惑に屈してどうする。

(負けるな。僕は()()()()をするために、“こっち側”にいるんだから。全部達成するまで、自分に負けるな。呉島光実)

 光実は自分で自分を抱き締めた。この腕が兄か妹のものであればいいのに、という甘えに、蓋をして。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ